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欧州スーパーリーグ クロニクル

欧州スーパーリーグ構想は、発表からわずか数日で事実上頓挫した。

ヨーロッパを代表する12のクラブは4月18日、かねてから噂されていた欧州スーパーリーグの創設で合意したことを正式に発表した。

しかし、この構想にはまたたく間に批判が殺到し、一部クラブに利益が集中する構想だったことが「欧州サッカーの伝統を軽視している」と猛批判を受けた。

国際サッカー連盟(FIFA)と欧州サッカー連盟(UEFA)は即座に反対を表明し、欧州スーパーリーグに参加するクラブと選手をチャンピオンズリーグやワールドカップから締め出す方針さえ示した。

英政界までも巻き込む大騒動となったことで、プレミアリーグの6クラブ(マンチェスター・U、マンチェスター・C、アーセナル、トッテナム、チェルシー、リヴァプール)が撤退を表明。

4月21日にはインテル、ミラン、アトレティコ・マドリードも不参加を決定。

ユヴェントスも、欧州スーパーリーグの開催が困難であることを公式声明で認めた。

欧州スーパーリーグ創設の発表から頓挫までの主な流れは以下の通りだ。

4月15日(木)

午後9時前、ブンデスリーガを運営するドイツサッカーリーグ機構(DFL)のクリスティアン・ザイファートCEOの携帯電話に最初の警告が届いた。

この2日間、プレミアリーグのいくつかのクラブが欧州スーパーリーグの創設に合意するという噂が高まっていることを知らされた。

4月16日(金)

正午、ザイファートCEOとプレミアリーグのリチャード・マスターズCEOがビデオ会議を行った。

マスターズCEOはこのビデオ会議で、プレミアリーグの4〜5クラブにスペインとイタリアの各3クラブを加えた欧州スーパーリーグについて報告。
欧州スーパーリーグの創設は来週発表されると伝えたと言われている。

ザイファートCEOはビデオ会議の後、UEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長に次のようなメッセージを送っている。
「欧州スーパーリーグが、UEFAとチャンピオンズリーグにとって深刻な脅威となり得るという情報を持っている。そして、もし欧州スーパーリーグが実現したら、ブンデスリーガは即座に反対の立場をとるだろう」

来週、事実関係が明らかになった時、ザイファートCEOは再び連絡を取ることになった。

この日は朝から欧州クラブ協会(ECA)の理事会による会議が開かれていた。

その中には、バイエルンの弁護士ミヒャエル・ゲルリンガー氏とドルトムントのハンス=ヨアヒム・ヴァツケCEOも含まれていた。

ゲルリンガー弁護士はすでに前夜、DFLから警告を受けていた。

8つのトップクラブで構成される欧州スーパーリーグの噂があったのだ。

ヴァツケCEOもまた、最初の警告を受け取っていた。

ゲルリンガー弁護士はECA内部のWhatsAppグループで、アンドレア・アニェッリ(ユヴェントス会長)とエド・ウッドワード(マンチェスター・UのCEO)の腹心に尋ねてみたところ、すぐに落ち着いた返答が返ってきたという。

ユヴェントスのアニェッリ会長のリーダーシップのもと、ECAは全会一致で24/25シーズンからのCLフォーマット改革を承認した。

欧州スーパーリーグについては一言も説明はなかった。

4月17日(土)

事態は収拾に向かっているはずだった。

だが、UEFAのチェフェリン会長が自宅のあるスロベニアのリュブリャナから、UEFA本部のあるスイスのニヨンに車で向かっている途中に携帯電話が鳴った。

10~11のクラブが欧州スーパーリーグ創設の契約書にサインし、日曜日に発表するというのだ。

チェフェリン会長は、「私はショックを受けた」と語っている。

チェフェリン会長はユヴェントスのアニェッリ会長に電話をかけた。

アニェッリ会長は「でたらめだ、嘘だ、信じるな、私を信じろ!」と強く否定した。

そして、チェフェリン会長は疑惑の噂を一掃するために、共同声明を発表することを提案し、アニェッリ会長も同意した。

チェフェリン会長は次のガソリンスタンドに立ち寄り、短い声明文を作成してアニェッリ会長に送った。

アニェッリ会長から電話がかかってきて、「少しだけ変更したいので、25分後に連絡する」と言われたという。

その後、チェフェリン会長にアニェッリ会長からは何の連絡もなかった。

それ以来、アニェッリ会長の携帯電話の電源は切られていたという。

アニェッリ会長の娘の名付け親であるチェフェリン会長は、アニェッリの妻を介して緊急に電話をかけ直してもらうことにした。

アニェッリ会長はすぐに連絡してくれるとのことだった。

4月18日(日)

DFLのザイファートCEOは、イングランドからさらなる情報を受け取った。

欧州スーパーリーグをめぐる事態はさらに深刻化していた。

ECAでは危機管理グループが結成され、彼らは一日中、欧州スーパーリーグ創設に関わる誰かに連絡を取ろうとするが、うまくいかない。

午前10時30分、レヴァークーゼンのフェルナンド・カロCEOは、UEFAのジョルジョ・マルケッティ副事務総長から警告の電話を受けた。

カロCEOはラ・リーガのハビエル・テバス会長に連絡を取り、スペインの3クラブが本当に真剣なのかどうかを確認した。
テバス会長は不本意ながらも肯定的な答えをした。

日曜日の正午、ザイファートCEOはコミュニケーション部門の責任者に連絡した。

UEFA、プレミアリーグ、セリエA、ラ・リーガの4団体は、すでに共同声明を作成していた。

ザイファートCEOは午後1時頃、UEFAのチェフェリン会長に次のようなメッセージを送っている。
「あなたの声明を送ってください。我々もそれに同意し、欧州スーパーリーグを直ちに拒否する」

数分後、チェフェリン会長から電話があり、高速道路でのアニェッリ会長との会話や彼の消息がザイファートCEOに伝えられた。

ザイファートCEOはブンデスリーガを代表して、UEFAの声明にサインすることを申し出た。

チェフェリン会長は、「声明は反乱を起こした3つの協会とそのリーグに限定したいが、ヨーロッパで最も大きく重要なリーグの1つであるブンデスリーガが直後に明確な立場を取るなら歓迎する」と感謝した。

ドルトムントのヴァツケCEOは午後1時頃、12クラブによる欧州スーパーリーグがまもなく発表されることを知らされた。

15時30分キックオフのブンデス第29節ドルトムント対ブレーメン戦の前に、ヴァツケCEOとバイエルンのカール=ハインツ・ルンメニゲCEOは電話で今後の方針を話し合った。

スーパーリーグを崩壊させるには、ドミノ効果しかないことは二人の中で明らかだった。

最も有力なスタート地点は、プレミアリーグの6クラブだ。

プレミアリーグの6クラブは、この騒動でイギリスのボリス・ジョンソン首相を敵に回していた。

午後6時、DFLの声明がドイツ語と英語で発表された。

午後8時15分、ECAの緊急理事会が招集された。

そして、疑惑は確信に変わった。

欧州スーパーリーグを目論むクラブの代表者7人全員が行方不明で、連絡が取れなかったのだ。

その間にチェフェリン会長と話をしたヴァツケCEO、バイエルンのゲルリンガー弁護士、パリ・サンジェルマンのナセル・アルケライフィ会長の主導で、バイエルンのルンメニゲCEOがアニェッリに代わってECAの代表としてUEFA執行役員を引き継ぐよう説得された。

4月19日(月)

4月19日(月)午前0時22分、欧州スーパーリーグ創設が発表された。

その数分後、彼らはECAと関連するすべての組織からの脱退を宣言した。

午前9時、UEFA執行委員会の会議が始まり、実際にミュンヘンをEUROの開催地として決定した。

しかし、欧州スーパーリーグについての議論はすべて後回しになっていた

ザイファートCEOは、ルンメニゲCEO(バイエルン)、ヴァツケCEO(ドルトムント)、カロCEO(レヴァークーゼン)と常に連絡を取り合っていた。

この4人の信条は、ブンデスリーガがスーパーリーグを冷遇していることに一抹の疑念も抱いてはならないというものだった。

チェフェリン会長は表向きには冷静で、UEFA関係者には「気をつけろ、水曜には不気味さはなくなる」と言い聞かせていたという。

ファンの抗議行動の激しさがチェフェリン会長を楽観的にさせたのだ。

その後、車でスロベニアに戻ったチェフェリン会長は、到着した時には自分の目を疑った。

チェフェリン会長の携帯電話には3800通ものメッセージが届いていたのだ。
世界中からの連帯の表明だ。

4月20日(火)

チェフェリン会長の予言は正しかった。

欧州スーパーリーグに参加したクラブは、ファンと各国協会の脅迫という巨大な逆風を受けて、次々と撤退していく。

最後に残ったのは、レアル・マドリード、バルセロナ、ユヴェントスだけだった(※ユベントスも21日に白旗宣言)。

ルンメニゲCEOは、第30節バイエルン対レヴァークーゼン戦のスタンドで、チェフェリン会長から電話を受けた。

そして、これからどうなるのか?

チェフェリン会長は12クラブがECAに再加盟するまでは話をしたいくないと考えている。

ECAの新理事会は説明と謝罪を求めており、そうでなければ再加盟は認められないだろうと見られている。

一つだけはっきりしていることは、反逆の主導者であるアニェッリ会長にとって、将来的にECA理事会で役員になることは問題外であるということだ。


参照:4月25日、Bild




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