最期のコーヒー
私、むかしっから、喫茶店好きやねん。
もう少し、向こうの方・・・香櫨園の駅に近いところにな、喫茶店があって、結構長いこと働いててんで。
お客さんがいろいろ来るのが好きやねん。
そこ辞めるってなった時、常連の男の人が
「ちゃんとかわいいおばあちゃんになりやー」っていうてくれてね。
「今でも十分かわいいで」っていいかえしててんけど。
『スタバ、毎朝日課ですやん?コーヒー好きなんでしょ?』
あのな、スタバのコーヒーが好きなんと違うねん。
雰囲気が楽しいねん。
いっつも、ぼんちゃんが来てくれて帰ったあと、11時9分のバスにのって、スタバいくやろ。
雨はええねん。風が吹くのは困るわぁ。まっすぐ歩かれへんくなるし。
ぼんちゃんな、私が倒れてても、ほっといてな。
もう、そない生きてたくないし。
でもな、社長が笑いながら、いうねん。
「もし倒れてたら、スタバのコーヒーもってきますから」て。
私、コーヒーいらんわ。
別にあそこのコーヒーが好きなわけじゃないねんけど。
雰囲気が好きやねん。
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好きな世界を自分の言葉で語ってくれる。 何を恨むでもなく、何を墜とすでもなく、自分の世界を成り立たせる。 彼女にとっての死ぬことは、悲しみ憂えるものではなく、シンプルな区切りなんだなぁと思う。
今日も、暑い中、彼女はバスに数分乗り、いつものスタバでいつものホットコーヒーを飲んだだろう。