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【番外編】「南アフリカと日本の農業起業家のビジネス交流プロジェクト」その③
今回の南アレポート第3弾として、訪れた場所や起業家の横顔の一部をここで紹介したい。
1.アンディレ(Andile:Evergrow Seedlings Co-Founder)
ヨハネスブルグ郊外のソウェト(Soweto)という地域で、廃校の敷地を借りて育苗と周辺住民向けの葉物野菜の露地栽培を行っている。
ソウェトという地域はアパルトヘイト時代の黒人居住区で、タウンシップと呼ばれるいわゆるスラムである。その中で、育苗ビジネスをやりながら、タウンシップの居住者が畑に来ればホウレンソウ1枚から購入できる。ユニークなビジネスだ。
何より、アンディレの人懐っこい笑顔と誠実な人柄に皆虜になってしまった。
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2.ポール(Paul Ntshabele:PSJ Group CEO)
南ア有数の種苗会社で日本のサカタのタネの現地パートナー。調査研究やJICAの事業なども手広く行っている。ポールはやり手の実業家で、広大な敷地に工場、育苗施設、研究機関などが整然と並び、隣接した敷地で太陽光発電を行い、大量に消費する電気の一部を賄うなど、経営はいわゆる大企業のそれであった。種苗は底堅いビジネスであるが、サカタのタネが南アにここまで深く入り込んでいるのが驚き。他方、研究職は白人、種の製造ラインは黒人と、人種の壁が透けて見えた。
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3.ンバリ(Mbali Nwoko:Green Terrace CEO)
ハウスでピーマンとパプリカの栽培を行っているパワフルな若き女性起業家。別事業から農業に転身し、土地を一から買い求め、黒人、女性、若さ、農業未経験といったハードルを乗り越えて進む姿はまさにアントレプレナーそのもの。彼女のストーリーを聞いていると、乗り越える壁が日本と全く異なることに驚く。彼女はおそらく農業でなくても生きていけるだろう。ただ、彼女のような優秀な人材が一次産業でチャレンジしようと思える環境づくりがこの国で必要なのだろうと感じた。
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4.ナレディ(Naledi Farm)
土地を買い取り、在来種を中心とした作物を植え、そこから採った野菜を使った料理を提供したり、子どもたちの教育の場所として運営するファーム。とにかく心地よい空間。オーナーが民族のその誇りをもって夫と二人でこの農園を丁寧に作ってきたのが良くわかった。エコツーリズム、サステイナブルツーリズムの文脈の方がしっくりくる。ヨハネス、プレトリアエリアでこうした場所は圧倒的に少なく、多様な民族を抱える南アだからこその可能性はもっと追及してよいと感じた。
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5.アクアポニック(Aquaponics)
魚と作物を同時に栽培する手法である「アクアポニック」。ここではティラピアを飼育し、その排泄物を野菜の肥料としてレタスを栽培している。アメリカの財団の支部としてできた場所だが、南アフリカに合わせてローカライズする過程が非常に興味深かった。「鳥獣害被害はないのか?」との質問には、動物より隣接したタウンシップの住民による盗難が最もリスクだとの回答。過去太陽光パネルを盗まれたので、3階くらいの高所に付け替えたとのこと。他方、タウンシップの住民をスタッフとして雇い入れており、人材供給源にもなっている。この社会の根深さを感じる。
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6.フランソワ(Francois Griessel:Polyorganics)
廃棄物を収集し、堆肥の製造販売を行っている会社である。レナータとフランソワの姉弟で経営しており、超高級住宅街とタウンシップの中間に位置し、タウンシップの住民を雇用し、廃棄物の収集と堆肥製造を行い、高級住宅街を中心とした顧客に堆肥を販売している。裕福な白人が安い労働力を使った搾取ビジネスという見方をする人もいるかもしれない。ただ、彼らは情熱と使命感を持ってこの静脈ビジネスに取り組んでいる。若い彼らのような存在が人種や偏見を超えていくと信じたい。
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彼らは昨年から6か月間、月1回の頻度でオンラインでディスカッションしてきたメンバーだが、やはり現地に行って、会って話すのは全く違った。
現地で彼らと同じ空気を吸い、対話をする。
今まで何をしてきて、なぜこの事業をやろうとおもったのか。どうしたいと思っているのか。この環境で、この場所で、彼らだから、この事業になった。そういう文脈を多面的に理解することが重要で、表層的に事業だけを切り取ったところで本質は見えてこないというのが良くわかった。
そして、南アフリカは想像以上に多様で、複雑であった。
来週は特別レポート最終回。乞うご期待!
その④はこちら↓↓↓
その①、その②はこちら↓↓↓