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"農"と"福"はどう連携する?

先日神奈川県相模原市の農福連携のセミナーでお話しする機会がありました。就労支援事業者、農家、行政の方々が参加されて無事に閉会しました。その中で話切れなかったこと、思うことをこちらで書きます。農福連携はだんだんと浸透してきていますね。農業と福祉の連携のお話です。

今回のセミナーでは、就労支援事業所での工賃(被就労支援者へのお給金に近いもの)アップがポイントでした。いかに工賃をアップさせて自立の道を探るかということでした。農福連携は、農家が抱えている作業を切り出して、就労支援事業者に作業をお願いし、"農"業と"福"祉がお互いの強みを活かしあって連携していこうというお話です。

僕の基本的な考え方は農福連携賛成派で、作業は一人でやるよりみんなでやった方が楽しいし、作業のブラッシュアップにもなってよいなと思います。利用者(被就労支援者)もたまには自然の中で作業をすることでリフレッシュできるし、農業は成果が見えやすい作業も多いのでやっていて楽しいのではないかと思います。もっと連携を増やしていくとよいと思っています。

藪の整理もみんなでやればアッという間

工賃アップ

さて、本題です。
農福連携は利用者(被就労支援者のこと)の仕事が増えることでの待遇(工賃)改善、農家の作業軽減が同時に達成できる仕組みになっているのですが、現時点では工賃というのは非常に安く、農家の作業を安く肩代わりしてもらうだけにとどまってしまうことになりかねないなと思っています。びっくりするくらい安いのです。
安い労働力に置き換えることは農家の収益改善に寄与するのかもしれないですが、どうにも気持ちが悪いのです。「作業の工数が減って楽になった、自分の時給を考えたら農福連携の方が安く済んだ」というだけでは足りない気がします。

ある先輩農家さんが、
「まやかしの農福連携が多くて困っている」
と言っていたことを思い出しています。
(その方は農福連携大好きな方でとても素敵な農福連携をしています)

もうちょっと農家がわがままになってよいような気がしていて、農福連携の先にどういった農業ができるのか、新しいことにチャレンジできるのか、売り上げを増やすということにつながるかどうかのゴール設定がポイントかなと。「作業の工数が減って楽になった、自分の時給を考えたら農福連携の方が安く済んだ」の先にある、収益性を上げて利用者に還元していくことが重要だと思います。連携がいつか尻すぼみになってしまわないように、農家が売り上げをあげて利益を拡大できるような取り組みが必要なんだと思います。

農業経営の底上げに農福連携を活用して、結果として作業量や単価が上がり、結果として工賃が上がっていくような形にしたいなと思っています。
根底には農家の数はすぐには増えない(むしろ減っていく)と思っていることがあり、とはいえ食の問題は待ったナシだと思っているからです。よいものをたくさん生産してみんなで生き残っていかなくてはなりません。

ただの経費削減じゃつまらない。みんなの力で拡大志向

たとえば、農家の作業量が減った分を営業に回す、新しい圃場を持つ、新しい作物にチャレンジする、販売の仕組みを考える等々がありそうな気がします。
もっというと、売り上げを直接あげるような作業に農福連携をかませるのもありなんじゃないでしょうか?"自分達が携わった農作物"を自分たちで販売してもらう、自分たちの取組を知ってもらうことで集客につなげるなど、農家の作業の置き換えではなく、今までできていなかったことに農福連携の力を最初から投入して、みんなでやるのもよいのかもしれません。

さがみこファームでは?
さがみこファームでは、農園作業とブルーベリージャムづくりで4つの就労支援事業所と連携しています。事業者の方たちとは事前に農園のビジョンを説明して、お互いに協力体制が築けそうな方たちと連携することにしています。我々の課題である販路の拡大なんかも今後連携できたらいいなと思っているところです。連携先の事業所で彼らが作ったジャムを販売してもらったりはよいですね。自分たちが作ったものや関わったものを自分たちで販売する、きっと利用者の方もやる気になってくれるでしょう。

農福連携を農業経営に入れ込んで、農業を支えていく仲間が広がるようなイメージが良いなと思います。

最後に、利用者の就労支援という観点では評価制度が必要だと思っていて、しっかり作業ができる利用者に対しては相応の対価を払うべきだと考えます。こういった想いを持つに至ったのは、最初に農福連携を始めた事業所の方々の想いを聞いたことが大きく、いつも勉強をさせていただいています。

今回はまじめ回でした!きっと数年後には考えも変わっているような気もします。

2025.1.25 小出 竜士

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