東京住まいの泊まれる本屋 #サガコラム
わたくし、東京に住んでいるのだが、割とホテルを使ってる。
ホテルといっても泊まりはしないんだけど。
つい先日、新宿でご飯を食べていたらひどく疲れてしまった。
隣のキッズが騒ぎ出し、もう片方ではマダムたちが趣味のマウティングしている。普段、別に人が多いことに忌避感はない。匿名性万歳、人の営み万歳である。
だが、その時ばかりはつらかった。
その時はなぜか私の精神を逆なでした。まあ、そもそも疲れていたし、私のお気に入りのBEATSが壊れて、外の雑音はいりまくりのイヤホンで騒音ヲシャットアウトできなかったが悪かった。
まあそんな感じで、音楽という最強武器もない精神の防御力が低くなった私には、新宿はつらかった。最早、激混みのカフェで空いている席を探すのも、いまいちサービスの良くないチェーン店のカフェで、あまりおいしくないコーヒーを飲むのも最早まっぴらご免だった。
銭湯に行くのには、他人と裸をさらして密閉空間にいることにものすごく抵抗感を感じた。映画を観たいのだが、もはや席は夜まで空いてない。カラオケに行ってはみたけど、癒されるどころかむしろ虚無感が増えた。
だが、だからといって家に帰るだろうか?
いや、帰らない。
家に帰って家事をしたり、ご飯を作ったり、掃除をしたり、読みかけの専門書を読むのは嫌だ。いや、きっと帰ったところできっとそんなことをせず寝るんじゃないだろうか?
そんな私が向かったのは、BOOK AND BED TOKYOだった。
TOHOシネマズのすぐ隣にある、泊まれる本屋がコンセプトのホテル。本がそこかしこにあって、本棚の間で眠るような、そんな場所だ。
そこで、ふらっとお茶したり、デイタイムの利用をしている。
東京に住んでいる私には、別にホテルなんかいらない。
でも適度に人数制限がかかった、適度に匿名性があって、いい感じの音楽が流れる、落ち着いた場所が必要なのだ。
古着屋で見つけたお気に入りのセーターを着るように、衝動買いしたボルドーのリップをつけるように、限定カラーのスニーカーを履くように、ちょっとしたものを身に着けるだけで気分があがるように、私には時々エモい場所でぼーっと時間を過ごす必要があるのだ。
そういう場所には、Lo-fi hip hopが流れているべきだし、照明は間接照明、コンクリート打ちっぱなしで、店員さんのファッションはかっちょよくて自然体な。そういう場所だ。
BOOK AND BED TOKYOは、まさしくそういう場所だ。そんな場所でPOPEYEを読んで、BRUTUS読んで、WIREDを読み始めるころには、私の気持ちはちょいとマシになってくる。
そうなったらパソコンを開いてみてもいいし、読みかけの専門書を読み始めてもいい。方向転換して、漫画を読んでもいいかもしれない。
そうして、デイタイムの4時間が終わったらチェックアウトする。もうそのころには外は暗く、落ち着きを取り戻している。私は心穏やかに家に帰れるのだ。
私のBOOK AND BEDの使い方ってこんな感じだ。
家はいちばんの癒し、なんていうけどそんなことはない。モヤモヤとした気持ちのまま家に帰れば、その気持ちはあの狭い部屋の中でぐるぐると停滞し続ける。
……はあ。
なんだか落ち着いてきたし、もうすぐデイタイムが終わるので家に帰る。