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「社長失格」〜僕が会社を潰した理由〜

インターネットビジネス黎明期に頭角を表していた板倉雄一郎氏が、ハイパーネットという会社を立ち上げてから倒産に追い込まれるまでを描いた一冊。

この本を読む前に読んだ藤田晋社長の自伝において、藤田社長は当初ハイパーネット社に就職しようとしていた事が触れられており、そのきっかけでこの本を読むに至った。

個人的にこの本の面白さは板倉氏の人間性とサクセスストーリー、登場する錚々たるメンツである。

1,板倉氏の人間性
板倉氏の人間性は世間一般の経営者とは一味違うように感じる。というよりそもそもこの人は経営者というよりアイディアを創出する力と行動力が並外れた、少年のような起業家という印象を受けた。

俗に言う質の良い起業家が質の良い経営者とは限らないという事である。

首都高をスポーツカーで飛ばし、白金の家に美人な彼女と犬共に過ごし、六本木で女の子と夜な夜な飲む。男のロマンを詰め込んだような人物である。

しかし彼のこうした性格は株主や融資をしている銀行には歓迎されない。

あくまでこの本を読んだ感想だが、孫氏や三木谷氏など現在に至るまで生き残っている経営者達は、プライドよりも自分の生活よりも何よりも会社を1番に決断を下してきた結果なのだと感じた。

2,サクセスストーリーと転落
前述した性格の通り板倉氏は持ち前のアイディアと行動力で次々に事業を考えだし、形にする。彼のアイディアはいつも革新的なため、形にするまでは上り調子で進んでいく。

しかし彼は一つの事業を安定させるための一つ一つの小さな仕事をこなすことに向いていないように感じた。

つまり事業が形になったあと、その事業を軌道に乗せる事が苦手なように感じる。規模が大きくなればなるほど、安定させるには細かいところを雑にしてはならないことを学んだ。

その点板倉氏は運命の分かれ道といえる選択肢を、いくつか間違えたような気がする。

また時代が彼を押し上げ、時代が彼を転落させた。時代というのは主に銀行の動向である。積極的に貸付していた銀行が、企業の自己資本率を上げる潮流に変わり、取り立ててくるようになったのだ。

これは等しくベンチャー企業を苦しめたが、ハイパーネットは乗り切れなかったのだ。

3,登場するビッグネーム
この本には今の日本を牽引する偉大な経営者の名前が登場する。孫正義氏(ソフトバンク)、夏野剛氏(ドワンゴceo),国重惇史氏(楽天副会長),熊谷正寿氏(gmo)と言った錚々たるメンツだ。

しかしこれだけに収まらない、極め付けはあのマイクロソフトのビルゲイツ氏である。

板倉氏をわざわざビルゲイツ氏は訪ねにきた上で、会談の機会を設けた事が描写されている。
このシーンはネタバレになってしまうので詳しくは控えるが、ビルゲイツという謎に包まれた人物がどのような人間なのか、実際に会って話した人が記述しているのでリアリティがありとても興味深かった。

これらのメンツを並べた上で感じることは、板倉氏も僅かの選択が違っていたら、このメンツに並ぶ偉大な経営者として現在でも君臨していたであろうということだ。

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