“美味い!”の裏側にある血の通ったコミュニケーション〜山下牛舎にお邪魔しました〜
九州は梅雨前線の影響で、昨夜より大雨です。今日の夜は雷雨ってことで、週末に伺った山下牛舎の牛達は大丈夫かな、と心配になっているヒグマです。
ってことで、週末は佐賀県江北町の山下牛舎にお邪魔してエサやりのお手伝いをさせていただきました。
でかいんです!怖いんです!
1頭1頭が本当に体が大きくて、最初はビビりまくり!!
山下さんに笑われながら、ビクビクしながら牛達に乾草あげておりました。
成長過程であげる量が違うということで、仔牛たちはいっぱい成長してもらわなければならないので、たくさん!大きくなってくると、次は脂肪を付けていかなければならないので、少量を。
−−−この調整ってどんなふうに決めてるんですか?−−−
ん?経験(笑)
とクールに笑いながら教えてくれない山下さん。
でも1頭1頭の様子を確認しながら、前日夕方あげたエサの残り具合などを見ながらエサをあげている姿にヒントが。
経験で成長具合でどのくらいあげるっていうのは何となくあるけど、やっぱり生き物だから、マニュアル通りに行くわけじゃないんだよね。1頭1頭顔も違えば性格も違うから、前日の分をどのくらい食べたのかってのを確認したり、牛達と喋ったりしながら決めるんよ。
−−−牛と喋れるんですか!?−−−
なんとなくわかるって感じかな?よく食べた子は褒めてあげると嬉しそうな顔するし、遊んでほしいって甘えてくる子もいるし、なんかダルそうにしてると暑くなってきたからバテ始めたのかな〜とかね。
なんと!僕はどの牛も同じに見えるのに…。
この牛なんか、人に頭触らせないよ(笑)あっちの奴はよく懐くし。よく見ると面長の顔とか、丸顔なのとか、違うし、小屋の中でもこいつは強いとか、こいつは人見知りとか…(笑)
確かに言われてみると、顔…違いますね!なんか可愛くなってきちゃいました。(笑)
こいつイケメンです!!
え?俺はこっちの方がいいけどな〜。そいつは馬面だから、やっぱ牛っていうのはこういうちょっと丸い感じの方がいいよ!
なんて、不思議な会話が始まり、だんだんと牛に愛着が湧き始めたところで、こんな質問を…。
−−−この子達が出荷されるのって辛くないですか?−−−
そこまで1頭1頭のことを見ていると、愛着が湧いて別れが寂しくなりそうです。僕は耐えられない仕事かも…。
やっぱ少し寂しくはあるけど、この子達を美味しい佐賀牛として出荷することが俺の仕事だからね。そのために全力を尽くすのが俺の役目。
だから、太らせなくちゃいけないし、サシ(脂肪)も蓄えなきゃいけない。そうするとエサの調整とか必要になる。仔牛の時は乾草をたくさん食べてもらって、胃袋を大きくする。大きくなってきたら次は乾草を少なくして飼料を入れたりね。人間で言えばメタボの状態なんだよね。その状態を維持すると人と一緒でやっぱり病気とかにもなりやすくなる。
一見すると矛盾しているような仕事だよね。健康的に育てればサシが入らないから佐賀牛とは呼べないし、サシを入れるために脂肪をつけすぎると病気になっちゃう、そのギリギリのラインでこの子達を大きくしていかなきゃいけないんだから…。
美味しいものの背景には「命」があるんよ。
最近は全国でもブランドイメージがつき始めた佐賀牛の背景を知りました。畜産という分野は「命」を扱っている分、バッシングをもらいやすいデリケートな職業だと思います。
ただ、山下さんには、生産できれば、なんて考えはなくて、現場には牛達と山下さんの確かな「信頼関係」と「愛情」がありました。そこには「命」があり、それぞれがお互いを信じて作り上げられているブランドがありました。
最後に山下さんがおっしゃっていたことを書き記して今回の記事を終わりにします。
俺は、この現場を子どもに知ってもらうことって大切なことだと思うんだ。
学校でひよこを孵化させて大きくなったら食べるって「命」の授業ってあるじゃん。あれって賛否あると思うけど、あの体験をすることで当たり前に食べてることに感謝が生まれたり、味わって食べたり、残したりが少なくなると思うんよね。
この子達も将来は出荷されるけど、だからこそ美味しく食べてほしい。
そのためにこの現場を見てもらう、体験してもらうことをしてほしいな、と思う。