あなたにも世界一のチャンス「佐賀バルーン移住」は可能なのか
「空が広い」
佐賀を訪れる人なら誰しもが感じる、この安心するほどの広さ。
高層ビルがない佐賀市の広い空を毎年100機のバルーンが埋め尽くす「佐賀バルーンフェスタ」は、県民よりも多い90万人もの来場者数を誇る佐賀県の一大イベントです。
しかし空を優雅に飛ぶバルーン(熱気球)を見て、それが実はスカイスポーツだと言われて驚く人は多いのではないでしょうか。競技人口は日本になんと約2000人。野球のように幼いころからの練習が必要な競技ではないことから、今からでも世界一になれるチャンスが佐賀でつかめるのではないか?そんな疑問を抱きました。
果たして「佐賀バルーン移住」で世界一になれるのか、ニッチな世界・バルーンを実際に体験し、お話を伺ってきました。
自己紹介
バルーンの基本
先述した通り、バルーンがスカイスポーツだと初めて知った方も多いと思います。「ただふわふわと飛んでスポーツなのか」と思ったそこのあなた!そのふわふわの裏には高度な技術が求められているのです。
操作方法
バルーンには車のように、行く先を決められるハンドルがありません。「え!」という声が聞こえてきそうですね。そうなんです、バルーンを操縦するパイロットが操れるのは、上下移動のみなのです。大きな球皮のなかにバーナーで温めた空気を送ることで機体は上昇します。左右の行先は風任せなので、風をよみ、行きたい方向に吹いている風の高さに機体を合わせることで目的地へと進むことができます。また、重い機材を運んだり、無線を使いながら地上のメンバーと空の上のパイロットが連絡を取り合うチームスポーツでもあるのです。
競技種目
バルーン競技には10の種目があります。数キロ離れた決められたターゲットへ機体を動かし、空からマーカー(砂袋)を投げることを基本とし、その正確さを競います。もちろん自然の風が相手の競技なので、大会当日の朝、大会側が気象状況を考慮して実施する種目を発表します。
なぜ佐賀はバルーンで有名なのか
①独特の地形と気候
佐賀平野上空の風はいくつもの層になっており、その層は風向きも風速も異なります。そのため、目的地へと機体を動かすためには風を正確に見極める必要があり、技術力を要します。世界各地のパイロットが「一度は佐賀で飛んでみたい」というほど気候的に競技地として恵まれているのです。また、干拓地である佐賀市には高層ビルがありません。バルーンを見に訪れる観光客にとっても、広い空の中を飛ぶバルーンを見られる最高の土地なのです。
②フライトエリアが広い
どこでもバルーンを飛ばせられるわけではありません。フライトを許可されている「フライトエリア」は全国各地にありますが、佐賀のフライトエリアのように一度に20~25機が飛行可能という場所は、全国的に見ても数少ないのです。
③チーム数が多い
佐賀県はその地形と気候がバルーン飛行に適しているため、30~40のチームが活動をしています。全国的に見てもチーム数は多く、福岡から週末に佐賀で活動をされている方もいます。
【体験】実際どうやって飛ぶの?
2023年11月25・26日、12月9・10日の4日間、佐賀市で「SAGAバルーンチャレンジシリーズ」が開催され、24チームが競技を行いました。
BC佐賀夢飛行さんに見学のお願いをしたところ、快く受け入れて下さり、競技を間近で見させていただきました。
早朝7時に大会側から本日行う3種目の発表がありました。
・ミニマムディスタンス
一定時間浮遊したあと、マーカーを投下します。バルーンが離陸した地点とマーカーを投下した地点の近さを競います。空中でいかに風に左右されずにいれるかが鍵の種目です。
・PGD
離陸前にパイロット自身がマーカーを投下する地点を決め、その地点にむかい飛行、投下をします。正確に風向きや風速を予測する必要がある種目です。
・マキシマムディスタンス
いかに空中で動かないかを競うミニマムディスタンスとは逆で、決められた区域の中でマーカーを2つ投下し、できるだけマーカー同士を遠くに投げる種目です。
佐賀バルーンフェスタでは飛んでいく無数のバルーンを見て見慣れない景色を楽しんでいた私ですが、今回初めて「スポーツ」として見て、バルーンの多様な楽しみ方があることを体験。パイロットと地上にいるメンバーの連携で、ハンドルがないとは思えないほど正確にマーカーを投げる姿には感動しました。また、無線を使い連絡を取り合う姿は、まさに誰もが子どものときに夢見た遊びのようで、子ども心もくすぐられました。
佐賀から世界一をどう目指す
競技終了後、佐賀バルーンフェスタ組織委員会の中島丈晴さんにお話を伺いました。
Q.ぶっちゃけ、佐賀でバルーンの世界一位を目指すことは可能ですか?
中島さん「できると思います。ただ、バルーンはチームスポーツです。佐賀には多くのバルーンチームがありますが、活動頻度は様々で、高みを目指していくなら、自分に合ったチームを探すことが必要です。バルーンは朝早くから競技が始まることや、遠方での大会がある場合長時間を一緒に過ごすことから、チームとの密接度が自然と高くなります。チームに入ってから慣れるまでの期間は短くはできないので、長い目で見て関わることが大切です。」
Q.パイロットだけで生活している人はいますか?
中島さん「佐賀には純パイロットはいません。パイロット×〇〇で生活をしています。大会によっては賞金もありますが、パイロットは賞金よりも名誉のために飛んでいる印象があります。」
Q.バルーンに関わる機会はなかなかないですが、バルーンを始めたい人の入り口としてどのような方法がありますか?
中島さん「初めからチームに所属する以外にも入り口はあります。多いのは、バルーンフェスタなどのイベントを見に来て声をかけられるパターンです。また、フェスタではボランティアスタッフを募集しています。運営を通してバルーンに関りを持つ方もおられます。これは少ないですが、自分たちでチームを立ち上げるかたも中にはおられます。」
謎に包まれていた「バルーン」。実は多様な楽しみ方があり、世界一になれる可能性も秘めているのですね。
生活にどこかもやもやする、なにか人生で大きなことを成し遂げてみたい、そんな気持ちをバルーンとともに佐賀の大空に飛ばしてみてはいかがでしょうか。