【短編日記小説】#4 足を延ばせば
曇ってはいても明るい空。少々生暖かくとも、腐っても風は風。風が雲を動かすとは言うが、窓外に見る煙のような綿菓子のような、或いはサンタクロースの髭のような、幾重にも積み重ねられた白皙たる積雲達の行進には、どこか自発性が感じられる。
雲間から差し込む一筋の光芒は、hの家の真正面に建つ工場の、急勾配なトタン屋根に反射され、彼が住まう居間へと容赦なく降り注ぐ。それでも窓やカーテンを閉めたくはない彼は、休日という事もあって、好きなウォーキングをしようと、気まぐれにも衝動的に家を出て