会話湯
「うっかりしていた。これでは、大変なことになってしまう」
「どうされました、博士。そんなに焦っているなんて、あなたらしくもない」
「ああ、ちょうどいいところに。実は研究していた動物が逃げ出してしまったのです」
「なんですって。研究というと、あのライオン……」
「ライオンではありません。ネコとマグロ、それにニワトリの遺伝子をかけ合わせて作った特殊生物です」
「そんな細かいことはどうでもいい。そんなに焦っているということは、あれは凶暴なんですか。いつも厳重なオリに入っていましたね」
「いや、凶暴ということはありません。基本的には友好的で、人間にも従順。ですが、唯一ゲーム勝負には目がないのです」
「ゲーム勝負とは、また変なことをおっしゃいますね。動物がゲームをするのですか」
「ええ。ブラックジャック、マージャンにオセロまで、奴はあらゆるゲーム勝負に目がない。おまけにとんでもない負けず嫌いなんです」
「なんだか、わからなくなってきました。その程度のことなら、脱走したところで問題ないのではありませんか」
「大問題ですよ。そうだ、テレビをつけてください。もしかするとニュースになっているかもしれない」
「はあ、わかりました」