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ウメハラの「最強議論」批評シリーズ②:「斧最強説」批評

 本シリーズはウメハラの「最強議論」について、「属性最強議論」を中心として、議論を深めることを目的としたものです。
 格ゲーの話は一切しませんので悪しからず。
 パート①は以下をご参照ください。


1.大真面目に「最強」を議論する

 「斧最強説」もまたウメハラの代表的な雑談ネタである。しばしば身の程を知らぬ雑兵が王たるウメハラに「論戦」を挑み、一方的に「論破」されるようすが視聴者の笑いを誘っている。

 しかし、念のため断っておくが、ウメハラは大真面目に(少なくとも建前上は)議論している。この種の議論は、ネタだと高を括って悪ふざけに走ると死ぬほどすべるものである。大学生の飲み会のようなノリと勢いでどうにかなる問題ではない。ノリと勢いでどうにもならない問題をどうにかするのが議論である。パッションや思いつき、ハッタリも、議論のスパイスとしては加える分にはいいが、本筋の議論にはなりえない。王たるウメハラにこけおどしは通用しない。
 動画に挙げられる「ファランクス」もそのような思いつきの最たるものである。1v1か、集団戦か、その程度の前提も共有しないまま、結論ありきで、議論を深めようとする態度が一切見えない。「論破」などと、下らない目的に眼がくらみ、インスタントに気持ちよくなろうとしている魂胆が見え透いている人間は、みっともないものである。
 「最強」の議論はそんな生易しいものではない。ヘラヘラしないでほしい本当に。

2.「武器最強議論」の前提

 ところで、この「斧最強説」は一体何と比較して「最強」なのだろうか?  
 「近接武器」の比較であることはまず確かであろう。
 え?クロスボウ?

 本当に真面目にやってほしい。ヘラヘラするな。

 「近接武器」ということで話を進める。
 しかし、ひと口に「近接武器」と言っても、何を「最強」の候補とするか、という問題を解決しないことには議論が進まない。
 例えば、「剣」ひとつをとっても、一般的にイメージされるロングソードから、短剣(ショートソード)、フルーレやサーベル、クレイモア、日本刀、曲刀など多種多様な「剣」がある。また、「ハルベルト」は「槍」なのか「斧」なのか、といった問題もある。メイス、モーニングスター、鞭や鎖鎌などは比較対象として候補に挙がってもよいだろう。
 「近接」の定義も非常に難しい。「槍」や鞭、鎖鎌を「近接武器」としてよいかどうかすら怪しい。何なら「斧」や「槍」は「投擲武器」として使用されることもある(実際のところほとんどの武器は投擲可能である)ので、この点、前提条件として制限するかどうか、という問題も生じてくる。
 以上のような問題をあれこれと思案していても始まらない。まず、何らかのフォーマットを用意して、それを軸に議論していく方が建設的である。
 その際、有効なフォーマットとなり得るのはゲームの世界である。

3.「最強議論」と「相性」の概念

 ゲームの世界にはさまざまな武器が登場する。ゲームシステム上、それらは何種類かの武器種にカテゴライズされることが多い。
 ウメハラの議論では、「ファイヤーエムブレム」シリーズの主な武器種である「剣」「槍」「斧」の3種を比較した場合という前提の議論も交わされている。
 FEシリーズでは「聖戦の系譜」から「3すくみ」のシステムが採用され、「剣」「槍」「斧」の3つの武器種に「相性」の概念が生まれた。
 「最強議論」において、3すくみの概念は基本的に意味をなさない。
 当然である。「最強議論」と3すくみの概念はすこぶる相性が悪い。議論がループしてしまうからだ。結局、全ての武器に対して総合的に優位を取れなければ、「最強」とは言えない。
 そもそもゲームシステム上の仕掛けとして設けられた「相性」である、と言えばそこまでであり、実際的に考えて、その「相性」とやらがどれほどの説得力を持ち得るかは甚だ疑問である。が、今は深く立ち入らない。
 しかし、オーソドックスな「近接武器」のカテゴライズとして、「剣」「槍」「斧」は比較的イメージしやすいものである、とは言えそうだ。

4.「そもそも」問題

 ひとまずゲーム世界をフォーマットとして、「剣」「槍」「斧」を「近接武器」の最強候補と考えることは可能である。ただ、ゲーム世界の設定は、製作上のさじ加減でいかようにもバランスの操作が可能である。かといって現実世界に即して考えようとすると、「そもそも」の問題があれこれと立ち上がってしまう。このような「そもそも」を考え出すとキリがないのもまた事実である。
 最強候補の問題以外にも、例えば、その「最強」を決める勝負とやらは、1v1で行われるのか、それとも集団戦なのか、鎧や盾などの防具の使用は認められるか、それとも素裸なのか、場所はどうか、屋内か、野外か、野外なら地形や天候はどうか、決闘形式か、ゲリラ戦か、二刀流は認められるか、武器を持たない鉄拳による殴打も認められるか……まことにキリがないのである。
 このあたり、やはり配信上では、王たるウメハラのさじ加減による部分が大きく、「議論」というには公平性に欠ける点も否めない。しかし、配信とはそうしたものである。配信者と視聴者の議論というものは一対多であり、よほど丁寧に前提を確認・共有して、議論のルールを決めないことには成り立たず、平行線となるか、一方的なものになりがちである。
 ただまあ、こまけぇことは置いといて、雑談のネタとして盛り上がれば、配信としてはそれで十分である。こうした雑談ネタの意義は、上述のような「そもそも」の問題、考えるべき材料をふんだんに提供してくれる、という点にある。こういう議論は、結局のところ、その問題そのもの(どの武器が最強か?)よりも、その前提(どのような条件で最強を決めるか?)を検討する方が面白かったりするものなのだ。

5.今回のまとめ

 繰り返しになるが、「最強議論」において重要なのは前提条件である。
 今回の武器「最強議論」に関しては十分な議論が尽くされているとは言い難いが、これはその筋の人に委ねることにしたい。僕より詳しい人がきっとたくさんいるだろう。今回、ウメハラの「斧最強説」を取り上げた目的は、あくまで、前提が重要である、という点についてのコンセンサスを得ることにある。そして、本シリーズの本丸は「属性最強議論」である
 いよいよ次回からは、その本丸、ウメハラの「風属性最強説」批評に取り掛かりたい。


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