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ウメハラの「最強議論」批評シリーズ③:「風属性最強説」批評

 本シリーズはウメハラの「最強議論」について、「属性最強議論」を中心として、議論を深めることを目的としたものです。
 相変わらず格ゲーの話は一切していませんので悪しからず。
 バックナンバーをお読みいただくと、流れが分かりやすいと思います。


1.いきなり「論破」

 さて、ここでようやく本題に移るが、もうひとつウメハラの「最強説」を紹介しよう。それは「風属性最強説」である。

 「ウメハラが論破される」というセンセーショナルなサムネが目を引くが、これは視聴者を集めるための手管であろう。議論の本来の目的は相手を「論破」することではなく、より高次の議論に引き上げることである。議論には終わりはない。議論をすれば、また新しいい議論の材料が次々に湧いて出てくる。それを無理やりに断ち切って、自分の論理に服従させる「論破」は、ある種の暴力である。雑談ベースだとしても、議論でやってはいけないことのひとつであることは、今時断るまでもないことであろう。
 しかし、ウメハラ配信は、ウメハラ自身がそうであるように、やはり知的闘争を求める血の気の多い武闘派どもを引き寄せやすいということだろう。「論戦」を演出した方が人の目に付く、ということは理解できる。
 ただ、これは「論破」というより、議論の新しい視点、考えるべき材料が、視聴者の指摘によって提供された、と見る方が穏当であろう。

2.「属性最強議論」の候補

 さて、ここで改めて配信上で共有されている前提を確認しておきたい。
 まず「属性」とは「属性魔法」を指している。
 ウメハラが挙げた「属性」は「風」「火」「雷」「氷」の4種。これは「攻撃魔法」をベースとした候補であると思われる。
 そこに視聴者から「水」「土」「岩」の3属性が対抗馬として挙げられている。当初、これら3属性は歯牙にもかけない様子のウメハラであったが、視聴者の「人は水でできてるよ」という指摘により、議論は方向性の修正を余儀なくされた。この指摘を受けた後、ウメハラの挙げる候補属性のベースが「風」「水」「火」「土」の4種に修正されている点は注目に値する。
 なお、「光」「闇」も挙げられているが、ここではほとんど議論の対象になっていない。
 「属性魔法」「賢者」によって行使される。「賢者」は「属性魔法」の熟練度MAXであり、「火の賢者」「風の賢者」といった具合にその「属性」に特化した魔法能力を行使できる。「属性魔法」の行使には「詠唱」が必要であり、省略はできない。「魔法」が作用できる対象は「既に存在している物質の移動」であり、その場に存在しないものを創り出すことはできないとする。ただ、この「物質の移動」という説明は、議論の前提としては不十分である。
 「風」「物質(空気)の移動」、つまり「現象」そのものを指す。これに対して、「水」「氷」「土」「物質」そのものを指しており、「火」「雷」は「物質」の「運動の結果」として生じる現象を指す。作用する対象が異なる以上、公平な比較は不可能である。というより、「風最強」の結論ありきのそしりは免れない。
 また、この後、「賢者」対「賢者」から「賢者」対「インデペンデンス・デイに出てくるレベルの宇宙船」に前提が大きく変更されている点からも、議論が迷走していることが見て取れる。

3.「属性最強議論」の欠陥

 さらに、視聴者から射程や効果範囲の問題についても指摘されているが、ウメハラはこれについて「五分五分」としている。これも全くの説明不足である。相対距離が5mと100mでは話は全く変わってくる。
 「人体の60%が水で構成されている」という指摘は、直感的には水属性の優位性を支える根拠になり得るように見える。しかし、具体的に考えてみると、射程や効果範囲の問題、人体を構成する水分にどの程度作用できるのか、など、確認すべき前提が山ほどあることが分かる。もちろんこれは他の属性に関しても同様の手続きが必要になるだろう。すべて無制限であれば、大概の属性は、何とでも理屈をつけて、はるか遠くから即死攻撃可能という話になり、まともな議論にならないのだから。
 ともかく、ウメハラの「風属性最強論」には論理的欠陥があった。というより、毎度のことながら、議論の前提の確認・共有が不十分であったという方が適切かもしれない。それはウメハラ自身も認めるところである。
 なお、ウメハラは「氷」が「最弱」と断じているが、その理由は説明不要としている。おそらくウメハラにとっては言うまでもないこと、ということなのであろうが、議論の参加者全員にとってそれが「言うまでもないこと」であるとは限らない。これはレベルが低いというような問題ではなく、議論の前提がそもそも異なるという可能性もある。そのため、言うまでもないと思ったとしても、煩を厭わず丁寧にコンセンサスを構築していくことが円滑に議論を進めていく要諦なのである。

4.今回のまとめ

 やはり今回の議論の核心も「どのような前提で最強を決めるか」にあると言えるだろう。次回はこの議論を深めていくために、何よりもまず「最強」の候補となる「属性」とはいったい何が挙げられるのか、という問題を検討していきたい。
 さて、ここで「そもそも」の爆弾をひとつ落としておきたい。
 
 「風属性ってそもそも候補に入る?」

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