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漫画原作少年の敗北
小学生の頃は漫画家になりたかった。絵を描くのが好きで、物語を作るのも得意だったからだ。
しかしだんだん
「自分は自分で思っているほど絵が上手くない」
ということがわかり、将来の夢を「漫画の原作者」に修正した。
クラスにKという、絵が得意なやつがいた。
私はKに原作を提供し、漫画を描いてもらった。
「道場やぶり003」
「新八村伝」
「人造ドラゴン・鉄ガチ」
「新武道チャイナ」
といった共同作品が誕生したが、そのうちKが
「ユーシンの作る話は空手ばかりでつまらん!」
と言い出したのだ。
そしてKは、自分で物語を考えて
「荒野のガンマンの介」
という漫画を描いた。
一読して私は「勝った」と思った。すごく幼稚でギャグも笑えない。
しかしクラスでの評判は良く、特に女子の人気を集めた。
「今までで一番好き」
「K君の漫画、おもしろ〜い」
「ガンマンの介、最高」
「これからもK君一人で描いてほしい」
私は愕然とし、それなら、と頑張って自分で絵も描いた変身ヒーローもの「超人ハカタン」を発表した。
しかしこれは全く受け入れられず
「何がハカタンだ。馬鹿馬鹿しい」
「ユーシンは幼稚」
「絵が下手くそ」
「Kの爪の垢を煎じて飲め」
と散々な言われようであった。
そして運動会の時の「クラスの旗」の絵まで「ガンマンの介」になってしまった。
(くそ……Kの野郎、死ね)
私は漫画家や漫画原作者になる夢を捨てた。
漫画なんか嫌いだ!
俺は……俺は小説家になっちゃる!
日本一の小説家になるんや!
……で、現在62歳にして、noteにこんなことを書いているのである。