「エクソシスト」は「河童の三平」の仲間
今では映画史上最も恐ろしい映画(の一つ)とされて異論の出ない「エクソシスト」だが、公開当時の映画評や著名人の感想などを読むと
「意外に怖くなかった」
とするものが多く、その恐怖についてストレートに褒めているものが少ない。
この映画は我が国でも大ヒットしたものの、夏休みでも夜の最終回では空席が目立ち、9月に入り新学期が始まると、客足がぐんと落ちてしまうという「典型的なお子様映画」の興行形態だったのだ。
(本国では本作は年齢制限があり、大人同伴でなければ、子供は見られない映画だった)
そういえば、私が見に行った時も客のほとんどが子供であり、まだ事件が具体的でない前半(ニューシネマっぽくて、ややわかりにくい)では、退屈した子供が、席の間をウロウロ歩き回ったり
「いつになったら首が回るんかの〜」
とか言って大アクビしたりしていたのだ。
後半やっとオバケ少女が暴れ出すと、子供らはそれまでのフラストレーションを吹き飛ばすように、無駄に「キャーキャー」と騒ぎ
「吐いた!吐いた!」
「回った!回った!」
などと笑いながら叫んだりするのだから、これに紛れて見る大人の観客は白けてしまい、存分に怖がれなかったのも無理はない。
実際、我が国は「エクソシスト」の宣伝は、少年誌を中心に行われていたのであり、宗教的でやや高尚な作品をテレビの「ゲゲゲの鬼太郎」や「河童の三平」と同等に引き下げることで、若年層中心のヒットに導いたわけだ。
(当初、宣伝のための来日が予定されていたフリードキン監督は、これを察したためか、来日をキャンセルした)
そんな我が国が「エクソシストは史上最恐!」の評価に転じたのは、当時の子供らが、ワーワー騒いで大人を白けさせながらも、それなりに怖がっていたからだろう(ある年齢の子供らは、そんなに素直ではないのだ)。
長じた彼らの素直な感想が、現在の主流となったわけだ。