映画「東京湾炎上」
コンビナート爆破を要求するテロリストを欺くために「コンビナートが爆発する映画のミニチュア特撮映像」をテレビ放送する、という凄い映画。
東宝特撮技術の全力投球で撮られた「ミニチュア爆破シーン」を見たテロリスト達は、実際にコンビナートが爆破される実況映像だと信じて喜ぶ。
しかし我々現実世界の観客は、どんな映画なミニチュア特撮も決して「実景だ」と思わない。
「日本沈没」のコンビナート爆破映像も、本当にコンビナートに火を放って撮ったものではなく、ミニチュアを爆発させたものだ、ということを見抜いている。怪獣映画の怪獣も本当にいる怪獣を撮影したものではない、ということは子供でも知っている。
知った上で楽しんでいるのだ。
特撮映画なんだから特撮であることは当たり前である、として了解している。
では「日本沈没」や「ゴジラ」の特撮シーンを「現実の映像である」と言って提示されたら、我々はどう思うだろうか?「東京湾炎上」のテロリスト達のように無邪気に「ホンモノだ!」と信じるだろうか?
一度は映像を信じたテロリスト達だったが、ミニチュアと実景の合成のアラを見抜いた者がいて、特撮作戦は失敗する。見巧者の存在が映画の欠陥を暴く……という、憎たらしい映画評論家に対する皮肉が込められたような展開だ。
「コレガ日本ノヤリカタカ!」
騙されるっていうのは、実力による敗北よりも腹立たしい。テロリストは東京湾を死の海にすべく、時限爆破装置のボタンを押した!
SNSのフェイク動画による問題を予見した映画とも言える。