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映画館の悪臭人間

映画館で隣に座って欲しくないのは「臭い人」だ。
世の中には1ヶ月も2ヶ月も風呂に入らない人がいるが、そうした人の多くは、硫黄のような匂いを発している。
こんな人が隣に座ってきた場合、私は座席指定であっても、スタッフに声をかけて席を変えてもらうようにしている。
生真面目なスタッフが
「決まりなので座席は移動できません」
などと言う時は、スタッフの腕を引っ張って硫黄人間の横に連れて行くと
「ぐえ!これは確かに酷すぎるので、席の移動を認めます」
と、なる。

しかし満席で代われる席がない時もある。その際は、硫黄人間に
「すみませんが、あなたが臭すぎて映画が楽しめないので、これを噴霧してもいいですか?」
とカバンからファブリーズを出して噴射する。
私の経験では硫黄臭のある人は、気が弱く暴れたりすることはない。
ファブリーズはよく効くが、三十分ほどで効力が弱まるので、またシュッシュとやる。
最近は2時間半ぐらいの映画がざらだから、5〜6回は噴霧しなければならず実に面倒臭い。
映画に行く前ぐらいは風呂に入って欲しい。

硫黄人間の他に臭いのが、「握り飯男」だ。映画館に風呂敷に包んだ重箱を持ち込むのだが、中身が全部握り飯なのだ。
握り飯男は上映時間中、ほとんど休むことなく握り飯を食べ続ける。
20個も30個も食べるのだ。
冷えた大量のご飯の匂いは意外に強烈で、不思議なことに大便の臭いに近い。
クチャクチャ、むしゃむしゃという咀嚼音も気になるし、こんなに大量の握り飯が食えるのか?という驚きか映画に対する興味を上回ってしまい、スクリーンに集中できなくなる。
たまに
「美味いなぁ……握り飯は美味いなぁ」
などとボソボソいうのも気味が悪い。
握り飯男は映画が終わると空になった重箱の蓋を閉め
「あ〜食った食った」
と腹をさする。私が呆れ顔で見ると目線が合い
「便所に寄って、糞をしてから帰ります」
と言う。
赤の他人の私にいちいち排便の報告などしてくれなくてもいい。無神経の極みだ。
硫黄人間、握り飯男、共に出会いたくないが、私はもう10回以上彼らの隣席に座っているのである。

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