
リタイア | 集中投資の分散方法について
私のポートフォリオの9割近くは、AAPL株です。これは、給与の一部としてRSUで受け取っていたもので、そのまま放っておいているうちに、資産の大部分を占めるようになりました。Mega Techで長く働いているエンジニアで、何も考えずに、ぼーっと生きている方は、みんな同じような状況なのではないかと思います。
Concentrated Stock(集中投資)は、資産形成時には、大きなリターンが得られる可能性があるので、投資方法としては良いのかもしれませんが、リタイアした後は、資産保全の面からは、リスクが高すぎます。私は、AAPLが大好きですが、それでも運命を共にしたいとは思いません。今日は、極端に集中した株の分散方法について、私が調べてみたかぎりの内容を、お知らせしようと思います。
集中投資の問題点
Merrillが発行している Concentrated Stock Solutions によれば、集中株を持っている人の中には、心理的に売ることをためらう人がいるようです。特に、何年も勤めていた会社の株ですと、勤労倫理や、自分の頑張りなどを、勝手に投影してしまうのかもしれません。
Concentrated Stockには、いくつかの問題点が指摘されています。
ボラティリティー
株価の下落
価値の永久的損失(買収・倒産などによって、株価が無価値になることも)
どこまで変動率を許容できるかは、個人それぞれによりますが、試算保全においても、価値が下がった資産を、売却するのは避けたいところです。研究によると、個別株の変動率は、よく分散されたIndex投資に比べて3倍も高いそうです。そこで、いくつかのファイナンシャル・アドバイザーに問い合わせて、集中株の分散方法について調べてみました。
私は米国の税制については、ほとんどわかりませんので、この記事に書いてあることは、全部間違ってると思ってください。税金や資産運用については、CFPやCPAなどの専門家に相談してください。
Tax-Gain Harvesting
12ヶ月以上保有した長期株の売却益(Long-term Capital Gain)には、ある程度まで連邦税がかかりません。2024年度は、夫婦共同税申告の全課税額が$94,050以下の場合、売却益にはついては税率が0%でした。これを積極的に利用して、0%の税率区分が埋まるまで、長期保有株を売却します。
例)通常収入が$50,000ならば、$75,715までのLTCGについては、連邦税が0%でした。株の取得原価(cost-basis)が50%とすると、$151,430までの長期保有株を売っても課税されません。ただし、州税については、通常収入と合算して課税されるので、注意が必要です。
Tax-Loss Harvesting by Direct-Indexing
株の売却損を積極的に生成して、集中株の売却益をオフセットする方法です。あるIndex(S&P500など)を構成している、複数の会社の株をまず購入します。定期的に、評価損の出ている会社の株を売って、売却損を確定させます。その後、同じセクタの会社の株を取得するなどして、全体ではIndexにトラックするようにします。ただし、30日以内に、同様の会社の株を購入すると、Wash Saleの対象になるため、損失を控除できません。通常のIndex投資とは異なって、複数の会社の個別株を実際に保有するので、Direct-Indexingと呼ばれています。
この方法の利点は、売却損を積み上げつつ、Indexに分散投資できることです。保有する会社の数は、運用会社によって異なるようですが、US Large Capの場合、少なくても100社から、多いところでは350社にもなります。欠点は、コストと最低投資額が大きいことです。最近では、Fidelityのように手数料が0.40%で、最低投資額が$5000のようなところもあるようです。
Covered-Call Sale
現物株を利用した、コール・オプション取引によって、売却プレミアムを確保する方法です。将来の株価上昇による利益をあきらめる代わりに、現金収入を得ます。この方法自体では、分散にはなりませんが、プレミアムの分だけ、変動率を下げることができます。リスクは、オプションが行使されるかどうかは、株価しだいなので、Taxの見積もりや、分散プランが読みづらいところです。また、在職中には、その会社のオプション取引はできません。
この方法の応用として、Parametric社のDeltaShift投資があります。短期オプションを積極的に売って、株が上がれば買い戻して、さらに高値のコール・オプションを売ります。株が下がれば、オプション取引がExpireするにまかせます。理想的には、株を売ることなく、プレミアムを定期的に収入として得ることができます。特に、取得原価が高すぎて、今すぐ売れない株がある人には有効かもしれません。ただし、想定よりも、株価がかなり大きく上がった場合は、現金による補填や、現物株の売却を求められることになるので、リスクもあります。
例)NVDAの価格が$150の時に、オプション市場では、$170の3ヶ月コールが$5だった場合、コール・オプションを売って、$5 x 1000 = $5000の収入を得ます。もしNVDAが3ヶ月以内に、$170を越えれば、NVDAの現物株を1000株売ります。プレミアムの$5と合わせれば、実質$175で売却できたことになります。逆に、3ヶ月たっても$170に届かなかった場合は、オプションは行使されません。この時点で、もう一度コール・オプションを売ってもいいですし、$150のままだった場合は、プレミアムの$5と合わせて、実質$155で売れることにできます。
Exchange Fund
名前こそExchange Trade Fund(ETF)と似ていますが、中身は全然違います。Exchange Fundは、複数の投資家から、それぞれ保有する集中株を拠出してもらって、大きなFundを設立するものです。例えば、A投資家からはNVDAを$2M、B投資家からはAAPLを$1M拠出してもらって、全体では$3MのFundを作ります。これを7年間運用して、NVDAが$7MでAAPLが$2Mになったとすると、A投資家はNVDAを$7 x (2/3) = $4.6M、AAPLを $2M x (2/3) = $1.3Mを受け取ります。
この方法の利点は、分散した株が手に入れられることです。また、運用益も期待できます。欠点は、まず、どんな株が帰ってくるか、事前にはわからないことです。闇鍋みたいなもんです。さらに、取得原価は変わらないので、Unrealized Capital Gainが大きくなってしまう可能性があります。また、7年間というロック期間も、マイナスとしてあげられるでしょう。結果として、この方法は、やや時代遅れだと思いました。
まとめ
長々と買いてしまいましたが、私はまずCost-basisの高い集中株を売却して、US Large Capに連動したDirect-Indexingを始めました。だいたい、1年で6%から7%の売却損を生成してくれています。ただし、手数料が約1.5%と高いので、普通に税金を払ったほうが、トータルでは良いのではないかと思ったりもしています。それと同時に、Covered-callで、20%から25%の集中株を売却してもらうように、ブローカーに依頼しています。正直いうと、いろいろとお金のことを考えるのは、時間がもったいない気がするので、Tax-Gain Harvestingだけで、なんとかならないかななんて思っています。最後に、投資会社や保険会社のCFPの方は、あの手この手で、商品を売りつけてくるので、お気をつけてください。