Books ⁑ まど・みちお全詩集
2023年1月、ずっと欲しかった本『まど・みちお全詩集』をついに手にすることができました。
まどさんの詩といえば幼い頃から耳にする「ぞうさん」を始め童謡が有名ですが、私が詩人まど・みちおという人物をちゃんと知ったのは中学生の頃でした。
当時、合唱部に所属していた私は毎年冬に行われる少人数制のアカペラコンクールに向けて仲間と曲選びに励んでいました。
そして私たちの目を惹いたのが、まど・みちおさん作詞、木下牧子さん作曲の『おんがく』という曲でした。
曲の冒頭を聴いた瞬間、私は「これだ。」と静かな確信を持ったことを今でも覚えています。そして他のメンバーの意見も一致し選んだこの曲が中学生の私たち6人にとっての最後の合唱曲となりました。
ちなみに、この『おんがく』という曲を作曲された木下牧子さんも尊敬する作曲家さんです。木下さんの音楽は「美しい」という言葉が一番に浮かぶ旋律、ハーモニーで溢れています。
まどさんの詞は、優しくて柔らかくてあたたかい。
そう思うのはきっと視覚的なものもあります。すべてではありませんが、彼が書く詩はひらがなのものが多く、文字通り、詩を読む時に文字を優しく感じます。
私の場合は、まどさんの詩を読みだして平仮名の丸い曲線だったり、それが目に与える印象だったりと日本語の独特な魅力にも気付かされました。子どもでもわかる言葉を使って、大人にも響く詩を書く人なのです。
あと、まどさんの詩で面白いのは、彼のモノの見方が詩を通して感じられることです。言葉の響きで遊んでみたり、あるものを別のもので例えてみたり。
決して見える世界を押し付けてくるわけではなくて、「ただ、私にはこう見えてます」という表現が微笑ましくて面白いです。
しかしながら、この詩集の中で一番と言っていいほどに注目してしまったのは彼が書いた戦争協力詩でした。
読んでいて悲しくなったし、辛かったです。
こんなに優しく切ない言葉を紡ぐ人が、やはり時代には逆らえなかったのかと悔しくなりました。
詩集のあとがきは “お詫びにならぬお詫び” として戦争協力詩を書いたことへの謝罪が書かれています。
とても正直な文章で書かれていると感じました。
人によっては被害者であり、加害者であり、そう在ることから逃れられない人生を突きつけられているんですから、この時代を生きた人たちの上に生きている私は偉そうな口を叩くことはできません。
ただ、自分が書きたい詩からは正反対の世界で生きる時代を経ても自分を失くさなかった、まど・みちおという人は、なんと強い人なのだと感じました。
作品だけに限らず、下手な言い訳はせずに謙虚な言葉を歳をとっても綴れるって素晴らしいなと思うのです。
なんにせよ、やっと手に入ったこの詩集。これからゆっくりと少しずつ読んでいこうと思います。
今年は自分にとって節目の年、
ステキな誕生日の贈り物、本当にありがとう。
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[ 2023年1月 Medium より ]