御徒町エレジー第21話【ピリオドの向こう側】
新年一発目のクソみてえな一週間の仕事も今日で終わり。
やっと金曜日だ。
久しぶりに着たストレッチが効いていないタイプのワイシャツ。
二の腕と背中がパツパツ…
しかもだ。
胸からお腹にかけてのボタンとボタンの間がアコーディオンカーテンのように醜く膨らんでいる。
おかしい。。。
今年の年末年始は9日間連続朝ランという偉業を達成したはず。
ま、まあいい。
何とかなるだろう…
それより昼メシだ、相変わらず朝食を抜いているので腹ペコだ。
御徒町タイム午後14:00。
電話番終了。
今回も秋葉原のグランドラインを超え、ピリオドの向こう側へ行くのだ。
華金のワンランチカーニバルへ。
忍たま乱太郎の如く、忍者走りでビルの外に勢いよく駆け出す。
シュタタタタ。
前回の卍力(マンリキ)の前を目にも止まらぬ速さで通過。
ここから先は未開の地。
あまり遠くに行ってしまうと休憩時間中に戻れなくなってしまう。
ギリギリのラインで折り合いをつけなければ…
どこかにいい店はないか?
あっ!あった。
どこかで看板を見た事がある。
とりあえず入ってみようか。
ごく軽いノリで店内へ。
それが、終わりの始まりとは知らずに…
まずは食券機のメニューを確認。
牛カツカレー、カツカレー、黒カレー、赤カレー。
様々なカレーが並ぶ。
どれも美味そうだ、最初はカツカレーにしようと思っていた。
だが、とんでもない量のカツの画像を見つめている時に思う。
これどんだけカロリーあるんだろうと。
そして、左下にある【激辛】に視線が止まる。
鶏のチリチリ赤カレー【激辛】
カツは乗っていない、しかもヘルシーな鶏。
どっちを取る?カツor鶏。
明日は休日。
ア○ルが大噴火してもなんら問題がない。
ここはヘルシーを取るべき。
そして、食券をカウンターの店員に渡し、給水器から水を汲む。
目の前に貼ってあるオプションの掲示物を他人事のように眺める。
しばらくすると、店員から声をかけられる。
「トッピング3つ何にしましょ?」
えっ?俺も対象なのか。
慌てて目の前のメニューから
・味玉
・福神漬け
・ポテトサラダ
をフツーに読み上げる。
(ホントは番号で申告すると書いてあるが、優しく対応して頂く)
「お待たせしましたぁ。」
サフランライスと先程頼んだトッピングの皿が目の前に置かれる。
おおっ、美味そう。
ところがどっこい。
ドオォォォーン!
すごい長い青唐辛子と小さいけど凶暴に違いない赤唐辛子3本。
そして、一面に赤いパウダーが散りばめられている。
わぁ!キレイな宝石箱やぁ!
って、んな訳あるかいっ!
恐る恐るひと口目を口に運ぶ。
「 終わった… 」
旨みはある、だが。。。
「 すでに痛い… 」
その時脳内であの曲が流れ出す。
テッテッテッテッ、テレレレレー
アー、フゥーフゥー!
こうなりゃ行くしかねぇ。
限界突破!ピリオドの向こう側。
恐らく鶏ひき肉とトマトも入っていて少しマイルドになってはいるのだろうが、時すでに遅し…
ポタッ、ポタタッ。。。
首から上の汗腺が崩壊した。
テーブルのいたる所に汗が落ち始める。
涙も流れ、メガネのレンズも曇り始めた…
こうなると止めようがない。
ハンカチをテーブルに敷いて目立たないようにするのがやっとだ。
水を三杯おかわりし、やっと半分くらいルーがなくなった頃。
底の方に鶏肉が隠れていた。
だが時すでに遅し。
何を食べても痛い…
その時、カウンター越しに店員のオニーサンと目が合った。
「う、うわぁ。。。」
間違いなく俺を見てそう思っている表情。
ふと下を見ると椅子にまで汗が垂れている。
恐るべしチリチリ赤カレー!
激辛の名に偽りなし。
何とか全て平らげ俺のカーニバルは終幕した。
「 ごっそさん。」
達成感と共に外へ出る。
最近寒波が来てるらしいが、俺の汗を乾かすにはまだ足りない。
何ならランニングをした倍の量の汗をかいていた。
そしてこう思う。
次はカツカレーだ、と。
第二十二話へ続く