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御徒町エレジー第7話【完全に洋食の口になった、とある日の午後】
御徒町。
ここにはありとあらゆる国から観光客が集まって来る。
大体は上野の観光に来ているのだろうが、外国人向けの宿泊施設がこの辺に多いのだ。
デッカいリュックとキャリーケースを転がし、通行の妨げなどお構いなしに大声をあげながら団体で行動する。
「いい気なもんだ」
こちとら、これから行きたくもねぇつまんねー仕事へ向かう途中なのに。。。
プーーーン。
いい匂い。
金髪の腹の出たイギリス紳士が片手にパンを持っている。
ホットドッグなんかで使う真ん中に切れ込みの入ったコッペパンみたいなやつ。
そこに、セブンかどっかのコンビニのメンチカツ的なのを挟んでやがる。
しかも、ソースをぶっかけてある。
パンにソースがイイ感じに染みてやがる。
さすが、欧米人。
朝から揚げ物。
とても真似出来ねぇ。
だがしかし。
この朝の風景が午前中の俺の脳を完全にハックしていた。
「洋食が食いてえ…」
カニクリームコロッケとか。
メンチカツとか。
チーズハンバーグとか。
年季の入った黒光りした鉄板でジュージューしているヤツがいい。
午後1:40。
足早に向かう店。
「良かった、まだやってる!」
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ここは表向きはインドカレーの店だ。
だが、カレーを頼んではダメ。
それだけは悪手。
鉄板で提供される洋食(定食)。
オール揚げ物、もしくは肉一択。
ヘルシーとは無縁なメニュー。
この店ではそれが最適解!
この店は寸分の狂いも無く、れっきとした洋食店だ。
この店を洋食屋たらしめているのは、厨房のマスターが白いユニホームで、コック帽を被っているからだ。
そしてこの店に俺を誘ったのは
全てあの朝の外国人のせいだ。
さて。。。
都合の良いスケープゴートを用意してオーダーしたのは・・・
チーズハンバーグ目玉焼き。
略して、チーハン。
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一応、油はね用の紙が周りに被せてあるが油断してると被弾していまう位に熱してある鉄板。
目玉焼きは自分好みに半熟にしたいので、途中からチーハンの上に避難させておく。
「モヤシにかけてね」とステーキソースをオネーさんがテーブルに置いていくのだが…
初見でコレを食べた時、バチバチいってる状態の鉄板のモヤシにサラサラのステーキソースをかけてしまった。
怒り狂ったように茶色い豪雨がテーブルに降り注ぐ、阿鼻叫喚の図になったのは言うまでもない。
もうこの店は月に二、三回は来ているので、今ではバチバチが収まるまで、味噌汁でホッと一息入れるまでの余裕がある。
もちろん他の日替わりメニューも食した事がある。
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日によって、メンチカツやらカニクリームコロッケやら唐揚げがセットになって出てくる。
だが俺はここのチーハンが好きなので大体は頼んでしまう。
避難させていた半熟の目玉焼きの黄身をつぶして、ふっくら柔らかな濃厚なチーハンとからめて食す。
アァァァァ〜〜。
ウメェ。。。
午後の睡魔と胸焼けが代償になったとしても、お釣りが来る美味さである。
「ごっそさん!」
満ち、満たされたわぁ・・・
ベロベロに火傷した口の中で、濃厚なチーハンの味を思い出しながら、こう思う。
ありがとう。
イギリス紳士。
第八話へ続く