御徒町エレジー第15話【限界突破!グランドラインを超える旅】
グランドライン。
JR御徒町駅からアメ横へ渡る横断歩道を二分したライン。
御徒町駅から春日通りを渡った所が上野、手前が御徒町。
俺の中で、勝手にそう定義している。
なぜなら、休憩時間に職場のビルに戻れるか否かのギリギリのラインだからだ。
第13話で紹介した御徒町パンチョまでが俺の中のレッドライン。
店が混んで提供までに時間がかかってしまえば、それでアウト…
パンチョは人気店なので、正直言って食べ終わった頃には残り時間が20分と危ない所だった…
だが、俺は御徒町オーシャンの名だたる強敵(店)を制覇した大海の覇者になってしまった。
次なる強敵を探すとなると、限界を越えラインの向こう側に行かなければならない。
次に目指す目的地。
だいぶ前から決めていた。
横断歩道を渡ってすぐの場所。
通勤時(午前6:15)に横目でチラ見しながら、いつか行こうと目論んでいた店。
知人に教えてもらった中華の大人気店、その名は。
中華 大興(たいこう)
ここは外に並びが出来るほどの大人気店だ。
ここの名物オムライス。
そして、チャーハン。
食べてみたい。
だが万が一、行列に並んで料理の提供までに時間がかかってしまったらアウト・・・
ならばだ。
午後半休を取得してゆっくりビールでも飲みながら…
いや、それは無理な話だった。
俺の有休は0だ。。。
昼営業は11:00から15:00まで。
なるべく客の引けた14:00台に職場を出発。
あとは「赤影」の如く、忍者走りで10分以内に店に辿り着き、行列が出来ていないように運を天に任せるしかない。
だが更なる問題がある。
往路は良くても、復路はパンパンの胃袋で忍者走りは出来ない。
念の為、荷物を持って行こう。
時間をオーバーしたら、仮病を使って帰ればいい。
タイムアップの瞬間に瓶ビールと餃子を追加すればいいだけだ。
人生は長い。
あの時こうしてれば良かった。
そんな思いをこの先の人生で振り返る事なく生きていくのだ。
午後14:00。
ストップウォッチを起動し、ビルを飛び出した。
ハットリくんのように、軽やかに忍者走りで向かう。
店前に到着!幸い並びはない。
だが、店内満員。
外の椅子に腰掛けて待つ。
三分も待たずに中へ。
おねーさんが、お茶を運んで来ると同時に「オムライス!」のコール。
やった!やったぞ!
グランドラインを超え、俺は新たな歴史の一歩を刻んだ!
この店はかなり良い。
改装後らしく店内ピカピカだ。
そして食いたいメニューだらけだ。
全てのメニューが安い!
そして酒類も充実している。
ここはリピ決定だ。
そして、やってきた。
念願のオムライス。
なかなかデカい。
だが今日の為に朝メシは抜いている。
今日の俺なら余裕。
スプーンに福神漬けが添えられているところに中華を感じる。
ものすごい勢いで湯気が立っているオムライスを早速パッカーン。
どれどれ。。。
スプーンで一口目を頬張る。
アチィッ!
信じられない位に熱々だ。
一瞬で口内がベロベロ…
だが、時間がない。
咳き込みながら、夢中でオムライスをかき込む。
うめぇ、うめぇぞ。
気をてらうことなく、俺が食べたいオムライスを忠実に再現している。
いや、みんな好きな味だろう。
あっという間にたいらげ、一番最後に店に入って、一番先に店を出る。
これぞ大海の覇者が成せる業だ。
口の中はベロベロだが、これはグランドラインを超えた名誉の負傷である。
ありがとう「大興」
きっとすぐに再訪するだろう。
そうだ、急いで帰らねば…
タイマーを確認。
まだ30分しか経っていない。
そして思う。
「明日も来ようかな」と。
第十六話へ続く
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