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御徒町エレジー第27話【ハイブリッド・セオリー】
俺はラーメンが好きだ。
まあ、日本人なら嫌いと言う人は少ないだろう。
ひと口にラーメンと言っても店で食べる場合その業態はさまざまである。
まずは、ラーメン単体をメインにしているお店だ。
池袋にある豚骨醤油ラーメンの超人気店「無敵家」や上野アメ横にある淡麗系の「鴨to葱」など、その場所でないと味わえない、それゆえ並んで待たないと食べられないのが個人店である。
一方で、全国に多数店舗展開している「山岡家」や「天下一品」などのチェーン店は手軽にどこで食べてもその店の味が楽しめる。
だが今回語りたいのは、中華料理全般を扱っているところ。
レバニラ定食や焼肉定食などのガッツリ定食系。
餃子や春巻や焼売などの点心系。
はたまた炒飯や、中華丼、天津丼などの丼ぶり系。
そんな豊富な種類のメニューを取り揃え提供するお店。
いわゆる町中華だ。
そして、ラーメン店と町中華では、大きく異なる点がある。
それは町中華における麺類の種類がとんでもなく多いという事だ。
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秋葉原にお店を構える「生駒軒」
こちらの麺のメニューは、およそ30種類もある。(季節限定の冷やしを加えると更に増える)
こちらは御徒町駅前のガード下にある「慶豊」のメニュー。
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基本のラーメンや味噌ラーメンはまだいいとして、担々麺、サンラータンメン、台湾ラーメンまでもがアルバムに収録されている。
節操のないセットリストである。
まあ、この中のいくつかは上の具材を横流しして白メシに乗せて出してるのもあるのだろうが。
バイザウェイ(ところで)
町中華では「〜ラーメン」や「〜そば」両方の表現を自由自在にいいとこ取りして使用している。
「蕎麦」ではなく「そば」
ラーメンのクセにそば。
まるでラップとロックを融合したミクスチャーロックのようだ。
(ちなみに俺はリンキンパークが好きである)
更に面白いのが、ラーメンの呼び名が店によって違ってたりするところだ。
餡かけに豚の細切り炒めが乗っているラーメンが好物なのだが、店によってその呼び名が違うため、試しに一度頼んでみないと全貌が明らかにならないという事象が発生する。
「生駒軒」にて初見で名前から予想して頼んだのが下の画像だ。
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「肉そば」である。
これはビンゴ!
ちゃんと豚の細切りが乗っていてタケノコ、青梗菜、木耳がトロッとしたあんかけとマッチしている。
醤油のスープに餡が溶けて深い味わいになっている。
味も予想を裏切らなかった。
ちなみにいつも判断を鈍らせるのが「もやしそば」だ。
生駒軒の「もやしそば」はシャキシャキしたもやしと、ニラなどが乗ったタンメンに近いものであった。
However(ところが)
こちらの「慶豊」のモヤシそば
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世にも不思議なことに、タイトルにあるモヤシの存在感は皆無だ。
片栗粉をまぶし、炒めた豚細切り肉がタップリと入り、トロミのあるスープと相まって更なるジャンク感を醸し出す。
モヤシというヘルシーな響きは一切感じられないラウドな一杯だ。
俺はこの店の「モヤシそば」を「肉そば」と呼んでいる。
圧倒的に肉の方が多いからだ。
このように良い方向にラーメンが進化した現象を「ハイブリッド・セオリー(混合理論)」と俺は呼んでいる。
似たようなメニューの代表格に「スタミナラーメン」と「五目ラーメン」がある。
食ってみないと分からない。
そんな町中華のラーメンのメニューを見るたびに思う。
スマホが無かった時代。
中身の曲を知らずにCDのアルバムをジャケ買いしたあの頃を。
身体は確実に日々衰退してるのに、思考は1ミリも成長してない疲れたオッサン。
正に In The End だと。
第二十八話へ続く