御徒町エレジー第19話【ドン底社畜のとある休日】
御徒町タイム11:00。
雲ひとつない快晴の空の下。
俺はパンダ広場にいた。
今日は土曜日。
仕事でもないのに、ここ御徒町に来ていた。
何故なら人生の先輩であるTAKA氏に飲みに誘われたからだ。
TAKA氏とは10年以上の長い付き合いで、第9話の真冬の韓国旅行に一緒に行った仲である。
それだけではない。
俺の食べ歩き、飲み歩きライフはこの方に全て教えてもらったと言っても過言ではない。
そんな訳で、今回は俺のホームであるここ御徒町をナビゲートすべくご招待したのだ。
休日とはいえ、さすがにこの時間から営業している酒場は多くない。
まずは、24時間営業のこの店をチョイス。
まぁ、特に高くもなく、安くもないがいつでもやってる所だ。
一軒目にはちょうどいい。
瓶ビールを飲みながら、近況を語り合い、妻がUFOキャッチャーで取ったスラダンのミッチーのキーホルダーを差し上げ、まずはご機嫌取りをする。
TAKA氏はスラダンや黄金期のジャンプ作品が大好きなのだ。
続いて、歩いて最近のお気に入りスポットを目指す。
休日のアメ横や御徒町駅前は異国の方々がお祭り騒ぎしていてゆっくり飲めないからだ。
東上野のコリアンタウン。
そして、やって来たのは前回妻と訪店したハコザキだ。
昼12:00開店と同時に滑り込む。
客は誰もいない。
やはり、このエリアを選んで大正解だった。
広々としたソファー席に案内してもらった。
TAKA氏は瓶ビール、俺は前回と同じく下町ハイボールだ。
TAKA氏が肉刺しを食べたいと言ったので、3種盛りをオーダー。
「ニンニクと生姜タップリね!」
小慣れている!流石のTAKA!
ハツ、ハラミ、タン。
良い色だ、新鮮なのだろう。
すんげえ量のネギが盛ってある。
下の方に甘辛いタレが溜まっていて、それをタップリつけ、ネギ、ニンニク、生姜を乗せて食べてみる。
まずはハツからだ。
サクサクとした歯ざわり。
こりゃうめえ!
ネギをボロボロとテーブルにこぼしながら、二人で夢中で肉刺しをつまむ。
ハラミは柔らかく、タンは身が厚くチャーシューみたいだ。
妻は生肉が苦手なので、前回は遠慮したのだが、ここの肉刺しは本当に絶品だ。
次第にお互い酔いが回ってきて、バカ話に花が咲いた。
InstagramにハマっているTAKA氏、旅行先や居酒屋のツマミを投稿しているのは知っていた。
「スレッドって何なの?」
ん?投稿の事だろうか。
「この子から猛烈にアタックされてるんだけど、返信の仕方が分かんないんだよなぁ。」
TAKA氏のスマホをよく見たら、Threads(スレッズ)のアプリの事を言っていたようだった。
お盛んだな!TAKA!
久しぶりにホッピーを頼もうという事になり、TAKA氏がお得だからとキンミヤのボトルを入れてくれた。
このあたりから、徐々に記憶が曖昧になってしまっているが、確かTAKA氏が・・・
「締めに汁物食いたい…」
そう言ったので、俺の思い出の味である侍ラーメンに連れて行ったのだ。
酔っ払っているうえに、慣れないタッチパネルの食券機で、操作を誤りラーメン三枚と瓶ビールを四枚購入。
それをどうしたのかは全く覚えていない。
ただ、しょっぱいしょっぱいと言いながら最初は食べていたのに、最後は自分の分のスープを完飲し、俺の残したスープまでも飲み干したTAKA氏の最後の姿を何となく覚えている。
お互いどうやって帰ったのか。
無事に家に辿り着いた俺は、しかめっ面の妻と数分会話して、午後16:00から翌朝8:00までノンストップで寝ていたらしい。
そして目覚めた瞬間に思った。
人間の吐く息ではない、異臭を放つモンスター。
紛れもなく俺だった。。。
第二十話へ続く