チベット便り010 ゴンパ前にて
ヘッダーの写真は、ゴンパ前の露店。葛きりのような物に、辛めのソースをかけて食べる。ぶつ切り、又は、麺のようにスライスするかを選べる。私は一度しか食べてないが、行列ができる時もある。忙しい時は、インド人の少女や少年が水を運んだり、洗い物をしたりと手伝っている。ビニール袋に入れてテイクアウトするローカルをよく見かける人気店だ。[帰国後、調べたところ、Raphing(ラフィング)と呼ばれるチベタンのストリートフードで、浮き粉(小麦粉のグルテンを取り除いたデンプン)で作っている。分離させたグルテンも、具としてラフィングで包んだりして食す。]
ゴンパの中から、ラマ達の唱える夕方のお経が聞こえ始めた。太鼓と鐘の音。中を覗き込んでいた。ゴンパ前の露店のお姉さんが「入っても平気だよ。」と声をかけてくれた。「え?まじで?私が?ゴンパの中に?今?」と確認すると、「大丈夫だから行ってきな!」と笑った。
恐る恐る、門をくぐると、お堂の真ん中に10人ほどの貫禄のあるラマたちが車座になって経を唱えている。着るものが違えば日本のヤクザの親方の集まりに見えるだろう。所在無く立ちすくむ私に、一人のラマが経を唱えながら、手で私の進むべき道へ誘導してくれた。優しく。時計回りに私たちの周りを回りなさい。
ゆっくりと一周したが、一周が限界で、静かに退室して蝋燭で灯されたエントランスに置いてある椅子に腰掛けて、経を聞いていた。
ふと、視線に気づき目をむけると、反対側の椅子に腰掛けた一人のラマが私を笑顔で見ていた。ここで聞いてるの落ち着くよね。と言っているようだった。
ホテルへの帰り道、なんとなく立ち止まったカフェ。カフェの窓に背を向けて往来する人々を眺めていた。ふと、視線を感じて振り返ると、カフェの中にさっきのラマがいて、私を笑顔で見てた。ガラス越しに、気が合いますねぇ。とお互い言葉なく笑った。
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