チベット便り012 交渉"50Rs."
ナマステ!
私は、交渉が苦手だ。10ルピー(約20円)を必死で値上げされると、10ルピーで君がニッコリ笑えるなら良いよ!と思ってしまう。
今日は、そろそろヒマラヤが恋しくなって、キャンプ内の小さなツーリストオフィスに行った。オーナーは、30代のD&Gとか着ちゃってるテンジン(天神)。フレンドリーで親切で、ちょっとチャラい。相棒は、もっとチャラいがおもしろいヤツ。ほかに若い衆が二人、20代前半のパサンとノルブ。ノルブはチベット語で宝石。ラサの西にあるダライ・ラマの夏の離宮ノルブリンカは、宝石の庭という意味。
バス停までは、遠回りして歩道橋を渡る。たいした距離じゃないけど、歩道橋はとても汚くて、とっても小さいお婆さんが、とっても小さい赤ちゃんを抱いて住んでいて、居た堪れないし、体重計り屋さん(体重計を貸してくれるスタイル)とか、うさんくさい寄付がうざいので渡りたくない。ローカルは、片側3車線の道路をショートカットする。時間帯によって大渋滞して逆に渡りやすいが、流れている時はスピードを出す車が切れ目なく走ってくるので、なかなか渡れずストレス。普段は急がば回れ派だけど、歩道橋と天秤にかけるとね。また、自転車では、歩道橋が渡れないため、かなり離れた横断歩道を使わなければなりません。
ヒマラヤへのお土産がたくさんあって、バス停まで荷物を運んでくれるリクシャの手配をノルブにお願いした。ノルブは、あまり笑わず、寡黙に誠実に仕事をする青年。パサンも実直で、私のトラブル解消のため尽力してくれた。
ヒマラヤへの出発の日。インドのバスは時間通りに来ない。今では時間通りに来る方がビックリするまでに成長した。
夜。ノルブは、自転車リクシャを手配して、ショートカットで行く道を選んだ。 今回のリクシャは、赤いスカーフを巻いた小粋なおじさん。ノルブが、運転手に段取りを説明している。お礼を言って別れようとしたら、当たり前といった感じで一緒に来てくれた。リクシャに乗ってもいいと言うが遠慮した。
「今だ!」とノルブが号令をかけて皆んな一斉に走り出す。おじさんはリクシャを漕いで、ノルブは押してサポート。少し高くなった中央分離帯にみんなで協力してリクシャを持ち上げる。「yes!」思わず声が出てしまい、第一関門突破で団結心がうまれた。残り3車線。みんなの視線が左に移った。
なかなかとぎれない車。「今だ!」またノルブがタイミングを教えてくれた。わずかな隙間を縫って、3車線を渡りきった!思わずノルブとハイタッチ。興奮してしまい、「ダンニャバード!」おじさんに声をかけると、ドヤ顔で赤いスカーフをなびかせ、「100ルピー」ときた。おいおい、それは言い過ぎだと言おうとすると、ノルブが先に「30ルピーで十分だ。」と言ってくれ、「じゃあ50ルピー」と強気だ。私は、「ティーケ(ヒンディでOK)バィジー。いい仕事してくれたし50ルピーで。」とチップをのせた。
ノルブは呆れ顔で「マジでおっさん30で十分だろ。そのかわり、バスに荷物乗せるまでが仕事だから一緒にバスを待て。」とキレてた。その後も私にひつこく付き纏う物乞いの親子やお菓子売りから、何も言わずに間に入り、ずっと守ってくれていた。
しかも、バスが来るまで居てくれるという。予定時刻を過ぎてもなかなか来ないバス。携帯でドライバーに電話して確認してくれたり、仕事場や友人と話したりして、ずっと携帯をいじってはいたが、常にこちらに注意を向けてくれていた。
やっとバスが来て、赤いスカーフのバィジーが陽気に荷物をバスに積んでる間、 ノルブはバスの添乗員にチケットを渡したり、席まで案内してくれた。 「どこで降りるかも伝えてあるし、安心して良い旅を!」と行って去ろうとした。私は、丁重にお礼を言って、チップを渡そうとした。すると、そんなの必要ないよ。という風に優しく笑って、「ダンニャバード!」と言ってバスを降りた。バスの窓ごしに、もう一度だけ手を振って、すぐに、あの6車線を一人で足早にすり抜けて戻るノルブの後ろ姿を見送った。
おまけ写真。目がヤラれる2枚。夜道に走って追いかけながらリクシャを撮ると サイケデリックになる事を知った。
OMG. すごいな、こりゃ。でもなんか、また見ちゃう。
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