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ドイツ鋼鉄奮闘記(7)
ドイツからヘヴィメタル歌手のSaekoです(私の経歴はここを見て下さいね)。
さて、ドイツ鋼鉄奮闘記も今回で7回目。ちなみに、これは2005年から翌年まで、CDチェーン店すみやの月刊フリーペーパー「METAL ON METAL」▼に連載していたコラムを元にしています。ですので、ネタとしては古いけど、でも、全部発表したいんで、もうしばらくお付き合い下さい。マガジン「なんとかなるやろ!エピソード0(上)」で、今迄の6回分をまとめて読めます。
METAL ON METAL Vol.31
2005.5.25号(連載第四回)
さて、次のアルバムに向けての作曲活動が一段落つき、今はマイケル・エーレが楽曲をバンド編成にアレンジしてくれています。アレンジが完了すればいよいよレコーディングが始まります。ドラム、ベースからレコーディングして、キーボードや歌を最後に録音しますが、勿論、私は歌の録音の開始日までに歌詞を完成させねばなりません。そんな訳で最近は毎日、一人で家にこもってひたすら詞を書いています。(作詞から始める方もいるようですが、私の作詞作曲活動の順番は次の通りです。1.歌以外のバッキングの音を作る → 2. そのバックの音にあう歌メロを考える → 3. 歌メロに合う歌詞を考える。)
唯一外出するのは、歌のレッスン日。ちなみに、私のボイス・トレーナーはヘニング・バッセ、参考までに彼の参加してるバンドの一つ FIREWIND のMVを貼っておきますね!▼
彼の教室は隣町リューネブルクにあります。ハンブルクから電車で約30分、久しぶりに外の空気を味わいました。は〜、春ですね!花も咲き始めてとっても綺麗です。そして、春と言えば……やっぱり桜ですよね!
桜と日本人
さて、ここから先はヘヴィメタルの話じゃなくて、桜について書いて良いですか?だって、海外に住む日本人という立場で、どうしても今の自分の気持ちを書いておきたいのです。メタルのこと以外は興味ないって人は下の「おまけ」まで飛んでください〜!
桜って日本特有の花というイメージがありませんか。私もそうだったんですけど、でもドイツでもしっかり咲いているんですよね。でも、なんというか、ステイタスが違う?!ドイツの桜は春に咲く沢山の種類の花のうちの一つという感じで、どうしてか、ドイツの桜には日本にいた時みたいな特別な愛着(?!)を感じないんです。
で、電車に揺られて窓の外を流れていく桜並木を見ながら、ふと思ったんですよね。
「同じ花やのになんでやろ?なんで日本人はそんなに桜が好きなんやろ?」
きっと桜は世界のあちこちで咲いてるだろうけど、でも、あんなに開花を待ち望んで、ゴザひいてお弁当作ってお花見までしちゃうのって、たぶん世界広しと言えども日本人だけじゃないかなぁ。
私、今はドイツ在住ですが、短い期間とは言え、過去にスイスやカナダ、ハワイに住んだこともあるんです。今まで様々な国の人達と触れ合ってきたので、良い意味でも悪い意味でも、日本人とは何か、日本文化とは何かをよく考えちゃうんですよね。
そう言えば、以前、何かの本に、日本人には敗者を愛する遺伝子が組み込まれている⁈と書いてあった気がします。それはなくても、確かに、短くとも清らかに咲き、美しく"潔く"散る、そんな桜に特別に魅せられてしまう、そこにはやはり日本人特有の精神性のようなものが表れている気がします。
美しく生きる、つまりはアンフェアな勝利よりは公正な負けを良しとするみたいな。もちろん一番いいのは"公正な勝利"だと思うんですけど(笑)、でも、私は好きだなぁ。昔の武士の生き様とかも(美化されている部分も多いんでしょうけど)潔くてかっこいいなぁと思うのです。
自分を愛すること、自国を愛すること
私ね、人はまず自分を愛して生きていくべきだと思うんです。だって、本気で自分を愛せない人に本気で他人を愛せるのか疑問だから。自分を正しく愛せてない人に限って、他人に嫉妬したり、地位や権力を追いかけたり(それについては、「ABOVE HEAVEN BELOW HEAVEN」収録の「SINNERS FOR FALSE LIGHTS」で歌いました)、自分の力を必要以上に誇示しようとするんじゃないかな〜って思うんですよね。
で、同様に、私は自分の国を愛して生きたいなって思うんです。本気で自分の国を愛せない人に、本気で他の国の人を愛せるのか疑問だから。自国の美しさを知って、自国の文化を愛してこそ、他国の人の愛国心が想像できるんじゃないかと思うんです。異なる価値観や文化に美を見出し、それをありのままに受け入れるためにも、まず自国に誇りを持つべきじゃないかな。それに、運命として「日本」に生まれてきたなら、やっぱり「日本の美」を未来へ繋ぎ渡していく責任がある気がする。だけど、たまに日本に帰ると、みんな「日本の文化」に対して無関心な気がしてしまいます。
そう言えば、初めて日本を出た頃、海外ではあちこちで国旗を見かけるので驚きました。皆もっと自国を意識していて、何かこう、もっと誇りを持っているというか……。そう言えば、「世界価値観調査(英語)」という国際的な調査プロジェクトがあるんですが、国籍に対する誇りの高さを41カ国の人に調査したところ、日本人は40位、下から2番目だったそうです(1999-2004年度調査)。要するに、世界有数の「自国籍に誇りを持たない国民」。(2021年現在では、体感ですが、もう少し改善されてる気がします。)
そうそう、国の話をしていたらもう一つ思い出しました。最近、特に中国で反日運動が凄いみたいですね。私の家にはテレビもラジオもなく、ネットからの情報だけで、日本や他国での状態は分かりませんが、例えば、ハンブルクに限って言うと、先日も反日デモの計画がハンブルクの中国人のメーリング・リストでまわっていたそうです。日本人会へ情報が流れてきて、デモ予定日は日本人が営業するお店にはちょっとした緊張感がありました。あと、電車に乗ったら、一両丸ごとほぼ中国人しか乗ってなかった事があって……あの時はマジで怖かったです。日本人ってバレたらボコボコにされるんじゃないかと焦りました。
そうした反日運動への反動か、日本人の間で反中国人的な発言もいくつかの方面で聞きました。う〜ん、確かに国レベルでは私も「おいおい、中国」って思うことも少なくないので、国際社会に置いて、日本が「国」として主張すべきことや抗議すべきことはもっとハッキリすべきだと思います。正直、日本は弱腰過ぎると感じることも多いし、国際政治の場での日本人的な”ことなかれ主義”は逆に危険だと思ったりもします。でも、日本人が個人レベルで、中国国民(個人)に対して反感を持つのはどうかなって思うんですよね。日本のODA等についても中国国民は知らされていないと言うし、真実を知らされていないという意味では、彼ら自身も中国一党独裁の被害者なんじゃないかと。だから、中国人経営の店にペンキを塗る等の個人的&低次元な抗議の仕方ではなく、何かもっと美しい抗議の仕方はないのかな〜って思うんです。私はミュージシャンであって、政治家でもジャーナリストでもないから、深くはわからないんですけどね、でも何事にもできるだけ毅然と誇りを持って対処したいって思います。だって私は、桜の花の清らかさを愛する日本人だから。
そして、最近の反日運動が中国政府の行き過ぎた反日教育や情報操作による部分が多いなら、やはり各個人が自分の意見をしっかり持つことはとても大事だと思う。盲目的に情報に流されてしまうのが一番怖い。私なんかに何が正解かはわからないけど、でも、私はいろんな考え方があっていいと思うし、自分の考えをまとめる為にも、まずは表現や議論の自由があるべきだと思う。社会に対して無関心にならずに、(何事もやたら議論したがる傾向の強いドイツ人達に囲まれてるせいかもしれないけど)「私はこう思う」って、まずは各人が自分の思いをもっと口にしたらどうだろう。なぜなら、ロックってそう言う音楽だと思うのです!
だから、あくまで政治にはド素人の私の意見に過ぎないけれど、自分なりにドイツで感じたことを書いてみようと思ったのです。
私達が普段得ている情報にも多かれ少なかれ嘘はあるだろうし、結局、各個人が、惑わされないように、与えられた情報を一つ一つ自分自身の目でしっかり見極めていくことにしか答えはないような気がする。見極める為にはこれまた情報が必要というのが皮肉ですけど……。
全ての人がわかり合える日が来ますように。
2005年4月26日 ハンブルク
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真田:SAEKOさんの今回のネタは深いものがありますね。「桜の花の清らかさを愛する日本人」としてドイツでSAEKOさんにも頑張って欲しいです!
おまけ
今回は、途中から脱線して(?!)全然メタルと関係ない話をしてしまいました。そんな訳で、ちょっぴり音楽の話に戻りますね。
えっと、私のボイス・トレーナーはヘニング・バッセだったと上に書きましたが、その後、ネット環境が発達したので、今では結構多くの有名ミュージシャンがオンライン・レッスンをしています。もちろん日本語ではないので、最低限の英会話は必要だと思いますが、気になるミュージシャンがいたら検索してみてはいかがでしょうか。私の知る限りでも、下記のミュージシャンのレッスンがオンラインで受けられますよ〜。
ボーカル
ラルフ・シーパーズ(ex.ガンマ・レイ、プライマル・フィア)
ドラム
マーク・クロス(ex.ハロウィン、ex.メタリウム、ex. ファイアーウィンド)
コロナのせいか、2019年春以降は更新が滞っていますが……。
ピアノ、ギター、作曲編曲、音楽理論 etc.
オリバー・パロタイ(ex. ソンズオブシーズンズ、キャメロット)
他にも、今はソーシャル・メディアもいっぱいあるし、私が2002年に一人路上でビラ配りしてた時代とは違うから、日本の皆さんにもネットを最大限に利用して、海の向こうの彼らから色々吸収して欲しいです〜!じゃね〜!