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病気最優先の生活から,自分の健康を優先する生活へシフト

長年,オットの好みや,オットの病状に合わせた生活が当たり前になっていた。

オットがいなくなり,彼のために用意していたものが,ひとつひとつ,消えていく。

特にわかりやすいのが,食べ物。

冷蔵庫に常備していたタッパー入りのおかゆ。

その次はバナナ,ミニクリームパン,牛乳プリン,ヨーグルト,カルピスウォーター。薬の副作用で味覚が変わり,塩気が感じられなくなってから薄っすら甘いものを好んだので,これらを多めに買い込んでいたのだ。

りんご。終末期にすりおろした。また作るつもりで残りをラップに包んで冷蔵庫に入れていたのだけど、すっかり茶色くなってしまった。

半分残ったりんご味のアイスキャンディー。美味しそうに食べたので,あと半分は翌日にと思っていたのに。

ペットボトル大瓶で常備していたウイスキーとワインは,実家に引き取ってもらった。こんなものを飲めない私が飲んだらアル中になってしまう。

スーパーでまとめ買いしていたフルーツゼリーはまだ数個残っている。毎日のように仕事帰りに「買ってきて」と言われて、重いからいやだなと思ったっけ。いまだにこれはオットの物という意識が抜けず,手をつける気になれないでいる。

先日,noteで雑穀米が体にいいという記事を読んだ。そういえばずいぶん前には雑穀米を食べていた時期があったのだけど。

私は世間で流行るものをとりあえず導入する方だったので,20年くらい前は白米に雑穀やカルシウム強化米を混ぜていた。七分搗きの米を買っていたこともあった。

オットが10年前に消化器の手術をして以来,柔らかいごはんを好むようになり,水加減多めで炊くのが我が家の習慣となっていた。雑穀などを混ぜることもなくなった。


そうか。オットがいないから,オットに合わせた食事を用意する必要がなくなったのか。雑穀米を炊いてもいいのか。

制限がなくなるというのも不思議なものだ。

そういえば,お肌にいいというサプリメントも1,2年飲まなくなっていた。

持病の治療で通っていた婦人科にもご無沙汰だ。

自分のことをすっかり後回しにしていた。

今の私は,私のことを第一に考えていいのだ。

いやむしろ,私が倒れたら皆共倒れなのだ。私を気遣うことが,皆のためになるのだ。

義母がさかんに繰り返す「冴子さんが倒れたら,みんなが困るのだから」という台詞を重く感じて聞き流していたが,それは事実なのだ。


たくあん食べて満足している場合じゃなかった。

たまに顔そりエステに行って自分をメンテナンスした気になっている場合ではなかった。それはただの気分転換に過ぎず,本当の意味でのメンテナンスではない。

これからは自分の体にいいものを食べよう。

自分をいたわろう。

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冴子
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