渡辺裕之さんのこと
知り合い、というほどではなかったのでものを言うことはためらわれたのですが、不思議な因縁を感じたエピソードを思い出したのでそれだけを上げておきます。
渡辺裕之さんと初めてお会いしたのは10年以上前、友人が呼んでくれた俳優の今井雅之さん主催の飲み会でした。
気さくで優しい人だなあ、と思ったのを覚えています。
ひと回り歳上の渡辺さんとは干支が同じだという話になり、その後、ライブに呼んでいただいたり、渡辺さんが出演したばかりだという映画『The Winds of God』のご招待をいただきました。
特攻隊を扱った映画で、渡辺さんの役どころは特攻隊の隊長という重要な役でした。
観た後で再び感想を述べる機会があり、撮影現場での興味深い話をいろいろ聞かせてもらいました。
説明のひとつひとつに人柄の良さが滲み出ていて、この人、この業界でやっていくの、大変だろうなあと思った記憶があります。
当時私は駆け出しの作家で、まだ脚本なども書いたことがなく、ましてや、その後自分が俳優活動を始めるなど思いもよりませんでした。
だからあの頃、もっといろいろなことを聞いておけば良かったとすごく後悔しています。
そして、そんな風だったのでその時は映画の監督名にも意が及ばなかったのですが、渡辺さんが出たその映画『The Winds of God』を監督したのが、後年私が入学することとなったアップスアカデミー主宰の奈良橋陽子さんだと知ったのはつい数年前のことです。
渡辺さんとは数回しかお会いしたことがありませんでしたが、その後も今年まで欠かさず年賀状をくださり、Facebookの投稿もよく拝見していたので、次にお会いすることがあったら「私、奈良橋さんの学校に入ったんですよー」と報告するつもりでした。
謹んで心よりご冥福をお祈り申し上げます。