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タイガースの同級生バッテリーが明かす成功へのプロセス 書籍の仕事まとめ#24 下柳剛さん、矢野燿大さん著『気を込める』

2003年、2005年の阪神優勝を支えた同級生バッテリー・下柳剛さんと矢野燿大さん。

彼らが築き上げた信頼関係と、成功へのプロセスとは?

バッテリーの視点、下柳投手の視点、矢野捕手の視点から、野球哲学やタイガース愛が語られた一冊です。


バッテリーに必要なのは?


バッテリーに必要なのは、何でしょうか?

投手・下柳さんはこう言います。

「キャッチャーは、バッターを一番と近くで見て、いろいろなことを感じてくれている。ピッチャーを正面から見て、自分の変化を感じてくれている。そういう意味で、私にとって矢野燿大というキャッチャーは、とても頼りになる存在でした」

捕手・矢野さんはこう言います。

「下柳は、勝てば絶対に『ありがとう』と言ってくれるので、また頑張ろうと思える。そんなピッチャーは下柳くらいでしょう」

矢野さんは、勝った後のハイタッチの手で下柳さんの気持ちがわかったそうです。

普通、ハイタッチはお互いの手のひらと手のひらをあわせるものですよね?

ところが、下柳さんとのハイタッチは、グッと握手のような形になったそうです。

この本では、下柳さん、矢野さんそれぞれへの取材と、二人の対談を取材しました。

下柳さんは矢野さんを「矢野ちゃん」と呼び、矢野さんは下柳さんを「̪シモ」と呼んでいました。

取材を通して、投手・下柳さんと捕手・矢野さんから、「お互いがお互いを信頼している。気持ちを分かり合っているな」と感じました。


バッテリーはプラスとマイナス


ピッチャーとキャッチャーをなぜ「バッテリー」と呼ぶのか?

諸説ありますが、2人を電極にたとえて「ピッチャーが+(プラス)、キャッチャーが-(マイナス)で、ふたりでバッテリー」という説があります。

下柳さんと矢野さんのバッテリーをみると、この説を採用したくなりました。

矢野さんは、いろいろな動きで、どういう投球をしてほしいかを下柳さんに伝えました。

「ここは低めに投げてこいよ」

「思い切って腕を振れ!」

「ここはボール球でいいよ」

そんな矢野さんの無言のリードの意図を、下柳さんは的確にくみとっていたそうです。

下柳さんは、試合中に誰かがマウンドに来るのがイヤだったそうです。

キャッチャーが来ようとしたら、「帰れ」と言う。

ピッチングコーチが近寄ってきたら、同じ距離をとって離れていく。

でも、矢野さんだけは特別でした。

下柳さんは言います。

「矢野ちゃんは、オレが怒れば、なだめに来てくれた。気持ちが引き気味になっていたら、マスク越しに『ニコーッ』って笑顔を見せて、ミットをポンと叩く。そうすると、『もうひと踏ん張りや』という気持ちになる」

矢野さん曰く、下柳さんには、いい形で抑え出すと「調子に乗りすぎて危ないな」というときがあったようです。

そこで矢野さんは、キャッチャーとしてマイナス思考で「ちょっとシモを締めなアカンな」と考えていた、と。

この絶妙なコンビネーションで、チームの勝利に貢献したわけですね。


同級生バッテリーの「気」がこもった一冊


この本は、2013年に出版されました。

お二人の活躍で阪神が優勝した2003年、2005年は、僕はまだスポーツメーカーで営業マンをしていました。

大阪支店勤務で、たまたま阪神百貨店を担当していたんです。

スポーツ売り場にあるタイガースグッズ売り場が連日、大繁盛していたこと。優勝セールで商品が飛ぶように売れたことなどは記憶にあります。

しかし、当時の阪神、そして下柳さん、矢野さんについては詳しくは知りませんでした。

そこで、当時の資料(本、新聞や雑誌の記事など)を大量に読み込み、
「より詳しく聞き出そう」
「なんとかして、まだ世に出ていない話を引き出そう」と取材に臨みました。

下柳さんも矢野さんも、当時のエピソードや心情を詳しく、おもしろおかしく、熱く語ってくださいました。

本書には、タイトルどおり、お二人の「気」が込められています。だからこそ、阪神ファン、下柳さんファン、矢野さんファンにとって読みごたえのある本になったのだと思います。


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