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蒲田女子が女子高校野球を切り拓いた軌跡 書籍の仕事まとめ#23 佐伯要著 短編『女子だって、硬式野球!』

矢崎良一さんが監修する日刊スポーツ高校野球ノンフィクションシリーズ。

本作『あたらしい風』のテーマは、「時代を変える担い手たち」です。

僕は第5章「女子だって、硬式野球! 甲子園を知る指揮官 蒲田女子・秋元進監督が指導する女子高校野球」を執筆しました。


女子高校野球の歴史


2024年夏の高校野球選手権大会の参加校は、全国で3715校(3441チーム)。

では、女子野球は何校あるか、ご存知ですか?

2024年の全国高等学校女子硬式野球選手権大会の出場校は、過去最多の61チーム(60校と連合1チーム)でした。

僕が「女子だって、硬式野球!」で蒲田女子を取材したのは、2014年。

当時の選手権大会の出場校数は14校でした。

女子の高校野球が本格的にスタートしたのは、1997年。

第1回の全国高校女子硬式野球大会が開催されました。

そのときの参加校は、5校。蒲田女子はそのうちの1校でしたが、当時はまだソフトボール部が掛け持ちしていました。

つまり、蒲田女子の歴史は、女子高校野球の歴史でもあるのです。

女子野球はまだ発展途上にあると言えるでしょう。しかし、その歴史は着実に積み重ねられています。


ソフトボールから硬式野球へ


ソフトボール部の選手が、硬式野球をする。

97年当時の練習では、危険防止、ケガ予防にずいぶん気を遣ったそうです。

脛に打球が当たってもいたくないようにサッカーのシンガードを使用。

プロテクターをして、ノックを受けた。

外野ノックでは頭や顔にボールが当たらないように、キャッチャーマスクをかぶった。

キャッチャー用のマスクだけでは数が足りないので、アイスホッケー用のマスクや、フェイスガードも使用したとか。

フライの恐怖心がなくなるまでは、校舎の4階からボールを落として、それを捕る練習をしたそうです。

当時のソフトボール部の監督だった石川一郎さんは「なかにはホラー映画に出てくるジェイソンのようなマスクをしている選手もいた。誰が誰か、わからなかった」と、なつかしそうに笑って話してくれました。


甲子園を知る指揮官が就任


1999年。日体荏原の監督として1976年の夏の甲子園に出場した秋元監督が、蒲田女子のコーチに就任。2000年からは監督になりました。

当時の秋元監督には、もどかしさもあったようです。

そりゃそうですよね。蒲田女子は、野球初心者の集まり。

内野手の一塁送球は、一塁まで届かない。

捕手の二塁送球は、ゴロになる。

外野ノックは、秋元監督が「グラブを出して、立ってろ! そこへ打ってやるから!」と言って、打っていたそうです。

そのチームが、2000年夏の選手権で準優勝。快進撃ではありますが、秋元監督曰く「当時は初心者集団が準優勝できるレベルだった」とのことです。


女子野球の未来を感じた


2014年2月に蒲田女子にお邪魔したとき、僕は女子野球の取材は初めてでした。河川敷のグラウンドでの練習を見て、「こんなにレベルが高いのか」と驚きました。

ただ、練習風景は和気あいあい。

秋元監督「寒いか?」

選手たち「いえ、ホッカホカです」

というようなやり取りがあって、監督と選手というより、おじいちゃんと孫のような関係でした。

みんな、ホントに楽しそうにしていた。彼女たちの笑顔を見て、僕は女子野球の明るい未来を予感。原稿の最後に、そう綴りました。

今の女子高校野球の盛り上がりを見ると、「高校でも野球を続けたい」と思う選手が増えて、そういう環境が整いつつあるのだと思います。

そして、それは当時の選手たちの姿があったからこそなんだろうな、としみじみと感じます。


本書では、ほかにも著名なライターさんたちが短編を書かれています。

第1章 覇者の真実ー甲子園優勝校・前橋育英荒井直樹監督のブレない“心”の野球(文・中里浩章さん)
第2章 本気は伝わるー21世紀枠候補・長野西大槻寛監督が挑んだ意識革命(文・佐々木亨さん)
第3章 革命前夜ー高川学園・中野泰造監督が標榜する“ノーサイン野球”の舞台裏(文・谷上史朗さん)
第4章 全力疾走、全力発声ー須磨学園・志村幸広監督 進学校に根付かせる熱血野球(文・沢井史さん)
第6章 標なき道行き(後編)-星槎国際湘南・福冨洋祐監督と一期生 終わりなき歩み(文・矢崎良一さん)
終章 続・本気でやれば何かが変わるー青山学院高等部出身。青山学院大学・渡辺友太郎のプライド(文・矢崎良一さん)

いずれも高校野球の未来を担う指導者と選手たちの姿を描いた珠玉の短編です。

こんな執筆陣の一人に加えていただき、ホントに光栄でした。

そして、女子野球の取材という機会をいただき、ありがとうございました。

今後も女子野球が発展していくことを、心から願っています。

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