新型コロナにより「ギグワーク」が増加
ネット経由で企業や個人から単発の仕事を請け負う「ギグワーク」が、新型コロナウイルスの感染問題を機に日本で増えている。専用仲介サイトの新規登録者数は今年上半期で延べ100万人となる見通しだ。スキルを持ち時間や場所に縛られないギグワーカーだが、社会保険や休業補償などの安全網整備が課題になっている。(日本経済新聞電子版、2020年6月23日配信)
厚生労働省はウーバーイーツといったギグワーカーやフリーランスなど、契約上では雇用関係にない契約だが、実態としては労働基準法等が定義する労働者と変わりない働き方(働かせ方)を「雇用類似の働き方(働かせ方)」と呼ぶ。なお、労働組合法は労働基準法より広範囲に「労働者性」<労働者性とは労働者の定義のこと>を認めているので、労働基準法上は労働者でなく雇用類似者となるが、労働組合法上は雇用類似者ではなく労働者となる場合もある。
現在、厚生労働省(雇用環境・均等局)が実施する有識者会議「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」がギグワーカーを含む雇用類似者の問題を議論している。「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」は第1回会合が2018年10月19日に開催され、第19回会合が2020年2月14日に開かれた。その後は新型コロナの影響で開催されていない。
なお、「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」での議論は、安全衛生関係であれば、「雇用類似就業者に対する危害等を防止するための措置について、雇用との違いも踏まえつつ、どのように考えるか」「家内労働法等を参考にしつつ、措置が必要と考えられる場面、講ずべき主体等について、どのように考えるか」などが課題となっている。
また、就業時間では「雇用類似就業者の就業時間に関する一定の制限を設けることについて、業務の多様性や雇用との違い、健康確保の観点等も踏まえつつ、その要否について、どのように考えるか」「仮に設定する場合、その性質、守るべき主体等について、どのように考えるか。全ての雇用類似就業者に一律に就業時間の制限を設けることについては、必ずしも雇用類似就業者の利益になるとは限らないのではないか」「他方、健康確保の観点から、 一定の業種等について、働き方の実態を考慮した対応が必要という指摘について、どのように考えるか」などが課題となっている。
さらに損害賠償額の予定では「違約金の定めや損害賠償額の予定に一定の制限を設けることについて、雇用との違いも踏まえつつ、どのように考えるか」「請求場面等における対応について、どのように考えるか」「消費者契約法では、一定額を超える損害賠償の額を予定する条項等を無効とする条文があるが、損害賠償額の予定自体を禁止するものではない」などが課題となっている。
この議論の中で、もっとも重要な問題は、雇用類似者の健康管理問題ではないだろうか。「自由度が雇用類似の働き方のメリットとなっている場合が多い」とされるが、運送業務等の「一定の職種等において、心身にもたらす負荷が大きい、働く時間が自由に選択できないほど長時間働くといった状況がある場合には、その働きに歯止めをかけるための規律が必要になる場面もあるのではないか」ということ。今後も「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」の議論は注視すべき。