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労働災害と動的安全性

労働災害は、メーカーを中心とした産業の労働組合としては関心事である。死亡に至るような労働災害は減ってきているものの、その労働災害が近年なかなか減少していない。

何かをすれば、災害が起きる確率は上がる。高所に行けば、墜落する可能性が上がる。薬品を取り扱えば、薬傷する可能性は上がる。
一番安全なのは、何も使わない、高いところに行かないことだ。危険源をなくすことは本質安全と言われ、落下防止柵を設けてそもそも落ちなくしたり、安全な薬品に変えたりするなどするが、それができないケースが多い。

この本質安全を私は静的安全性と呼びたい。危険なものにアプローチしない、近づかない。自分と危険源の関係が静的だからだ。

一方で、何らか危険源を取り扱うとなれば、それは動的なことだ。危険なものと何らかの関係を持ちに行く。この状態でも安全性を担保しないといけない。これを動的安全性と呼びたい。

動的な状態は常に不確実性を含む。何らかの安全対策をとったとしてもそれはあくまで危険源との不確実性を下げているに過ぎず、何らかの拍子で外乱が起きれば、危険にさらされる。

どれだけ安全対策を施しても、不確実性は残る。動的安全性である以上、昨日は安全だったことも、今日は安全ではないことがある。動的安全の状態にいる以上、絶対はない。

つまり、一定の確率で労災は起こるものだ。だから労災は絶対にゼロにはならない。

しかし、大事なことは、「その絶対はない」ということを理解しているか、いないかで全く危機感が違うということだ。

それは車で言う「かもしれない」運転に通づることだ。いつも危険は襲ってくる可能性はある。そのことを忘れてはいけない。

そしてもう一つ大事なことは、「労災をゼロにする」という信念を持つことだ。

最初に出したデータは、労災をゼロにしたいという思いと、危険な作業をせざるを得ないという事実の平衡状態の結果、今の労災の発生の状況である。

この絶対的思いと、絶対的事実が均衡を保ち、今の労災の件数がある。ただ、いま一歩、「労災をゼロにする」という信念が足りていない。その思いが一段と強くなれば、その平衡状態はよりよい方向に傾くだろう。

「労災をゼロにはできない」という不確実性の現実と「労災をゼロにする」という信念のせめぎあい、絶対的矛盾をもっと理解しよう。そしてその平衡状態をかぎりなくゼロの位置に持っていきたい。

今日ももっと安全な職場を目指し、矛盾と戦い続けながら、活動を続ける。

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