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「治療と仕事の両立、現場の実態とは?」— 全国12,000人調査の結果
こんばんは、ゆあさです。
今日は2020年時の治療と仕事の両立支援に関して、支援制度の認知と利用申出の意識についての調査報告をレビューします。
治療と仕事の両立支援に関する全国労働者調査
~支援制度の認知と利用申出の意識
須賀 万智,山内 貴史,柳澤 裕之(2020)
みなさんの職場では、病気を抱えながら働くことについて、どのような取り組みがなされて、活用されていますか?
調査結果の概要
現在、政府や企業が「治療と仕事の両立支援」に取り組んでいますが、その認知度は非常に低いのが実情です。全国12,000人を対象に行われた調査によると、厚生労働省の取り組みを「知っている」と答えたのは わずか7%。
さらに、「職場に病気を申告することにデメリットを感じる」と答えた人(31%)が、メリットを感じる人(15%)の2倍以上にのぼることが分かりました。
なぜ、職場で病気を伝えにくいのか?
企業の支援はどこまで進んでいるのか?
本記事では、調査結果をもとに、治療と仕事の両立支援の現状と課題を探ります。
1. 治療と仕事の両立支援、どれくらい知られている?
• 厚生労働省の両立支援の認知度は7%
• 「聞いたことがあるが内容は知らない」:24.6%
• 「聞いたことがない」:68.8%
• 職場に相談窓口があると認識している人は27%
• 派遣社員は特に認知度が低い
• 支援制度を「知っている」派遣社員:4.0%(正社員6.8%)
• 相談窓口が「ある」と答えた派遣社員:11.1%(正社員26.8%)
• なぜここまで認知が低いのか?
• 企業側の情報発信が不足
• 小規模事業所ほど制度が整っていない
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2. 病気を職場に申告しづらい理由
• 「デメリットが多い」と答えた人:31%
• 「メリットが多い」と答えた人(15%)の 2倍
• 主なデメリット
• 「上司・同僚に迷惑をかける」:52%
• 「給料が下がる」:50%
• 「職場に居づらくなる」:48%
• 非正規雇用者では「契約を打ち切られる」が50%と最も多い
• 職種ごとの傾向
• 営業・接客、製造、運転・配達の職種では「デメリットが多い」と答える人が多い
• 「顧客対応がある」「肉体労働が中心」「シフト制で交代が難しい」などが影響
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3. 企業側の対応は進んでいるのか?
• 小規模事業所ほど支援制度の認知度が低い
• 従業員300人未満の事業所では、支援制度を「聞いたことがない」と答えた人が 78.7%
• 相談窓口が「ない」と答えた人:77.5%
• 産業医の配置状況
• 従業員1,000人以上の事業所:29.5%が「常勤の産業医がいる」
• 従業員10人未満の事業所:**1.7%**しか「常勤の産業医がいる」と答えていない
• 企業規模によって支援の格差が大きい
• 業種別の傾向
• 医療・福祉業では比較的認知度が高いが、宿泊業・飲食業では極めて低い
4. どうすれば「治療と仕事の両立」が進むのか?
• 政府・企業ができること
• 情報発信の強化(支援制度の周知)
• 小規模事業所向けの支援策の充実
• 産業医・保健師との連携強化
• 相談窓口の設置・運用
• 働く側ができること
• 支援制度についての情報収集
• 必要な支援を求める意識を持つ
• 「働きながら治療する」ことを当たり前の選択肢にする
この報告書から考えたこと
みなさんの職場では、病気を抱えていても働き続けられますか?厚労省のガイドライン、会社独自の両立支援制度は知っていますか?
全国調査の結果から見えてきたのは、「知られていない」「利用しづらい」制度が、支援の壁になっているということでした。
誰もが安心して働ける職場をつくるために、人事・産業保健職としては情報の周知や、相談しやすいよう門戸をあけておくことが大切だと思いました。
文字にすると簡単に感じるのですが、実際には「制度を知っていても利用しにくい」という声もあります。
この背景には、組織風土であったり、当事者の価値観(サラリーマンとして「こうあるべき」という価値観により、自分自身が制度を用いるとデメリットがあると考えてしまうこと)があると感じています。
いまの就業規則は「健康」であることが前提にありますが、疾病を持つ労働者は増加傾向にあるため、「前提」を再考する日がいつか来るのでは…なんて考えたりしました。
2025年の今は、より良い状況になっていたら嬉しいですね…。
今日もお付き合いありがとうございました!