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リーダーシップ・スタイルとビジョンの強さの関係のお話(論文レビュー)
おはようございます。
本日は「ビジョン」とリーダーシップについて深掘りです。
ビジョンを掲げることの大切さは、いろんな文脈から言われていますよね。
今回ご紹介する論文では、リーダーシップ・スタイルとビジョンの関係性について調べられたものです。
「The Relationship Between Vision Strength, Leadership Style, and Context(ビジョンの強さ、リーダーシップ・スタイル、コンテクストとの関係)」
Yair Bersona, Boas Shamirb, Bruce J. Avolioa, Micha Popperc(2001)
組織のビジョンを作っていたり、マネジメント研修を行ったりされる方には、良い示唆が得られるかも・・・?!
ご興味ある方は、お付き合いいただけると嬉しいです。
サクッと要約
この研究は、リーダーシップスタイル、ビジョンの強さ、組織の文脈との関係を分析しています。特に、変革的リーダーシップスタイルがビジョンの強さに与える影響を検証しました。
141人のリーダーを対象にした結果、変革的リーダーは、楽観的でインスピレーションを与えるビジョンを作成する傾向が強く、組織規模が小さいほどその影響が顕著でした。また、組織の規模がビジョンの内容に影響を与えることも示され、特に小規模組織のリーダーがより強力なビジョンを持つ傾向が見られました
リサーチクエスチョン
ビジョンの強さとリーダーシップスタイルの関係性は、組織のパフォーマンスと従業員の態度にどのように影響を与えるのか?
ビジョンの強さがリーダーシップの効果に及ぼす調整的な役割は何か?
組織の規模とビジョンの強さは反比例の関係にあるか?
<背景>
これまでの研究では、変革的リーダーシップとビジョンがフォロワーに与える影響は多く議論されていますが、ビジョンの内容とリーダーシップスタイルの関係性や組織規模の影響については体系的に検証されていませんでした。そのため、リーダーのビジョンがどのようにリーダーシップスタイルに反映され、異なる組織環境でどのように変わるかを明らかにする必要がありました。
研究デザイン
予備的な定性調査と定量的な分析を組み合わせたアプローチ。リーダーシップの評価とビジョン内容を分析し、それらの関係性を構造方程式モデリング(PLS分析)を用いて検証。
対象者: 141人のリーダー(男性73人、女性68人、平均年齢44.5歳)。対象者は中級から上級レベルの管理職・経営者で、教育機関、政府機関、社会サービス機関、営利団体からの参加者を含む
研究方法: リーダーシップの評価はMLQ(Multifactor Leadership Questionnaire)を用いて行い、ビジョンの内容はリーダーシップ研修中に作成されたビジョン・ステートメントをビデオ分析して評価。
この研究から得られた示唆
変革的リーダーは、よりインスピレーションを与える楽観的で自信に満ちたビジョンを作成する傾向があるが、その効果は小規模組織でより顕著である。
組織の規模がビジョンの内容に影響を与えるため、リーダーシップの影響を最大化するためには、組織の文脈を理解し、それに合わせたリーダーシップスタイルの選択が重要である。
受動的なリーダーは、インスピレーション性が低いビジョンを作成する傾向があり、組織変革をリードする力が弱い。
この論文の強みと弱み
強み: リーダーシップスタイルとビジョンの内容の関係を体系的に分析し、実際のリーダーが作成したビジョンを対象にした実証的なデータを提供している点。特に、組織の規模がリーダーシップの効果にどのように影響を与えるかという新しい視点を提供している。
弱み: サンプルが特定の地域と組織に限定されているため、一般化の範囲が限られている。また、ビジョンの評価がビデオテープの内容に依存しており、評価者の主観が影響する可能性がある点も挙げられる。
まとめ
変革型リーダーシップだとみなされるリーダーは、
ぶっ飛び過ぎず、かつ保守的すぎず、魅力的に感じる「ビジョン」を打ち出す力が必要なのですね。
ただ、パフォーマンスとしての伝え方も大切とな。。。
この論文の補完的な内容として、カークパトリックさんとBaumさんの論文(A longitudinal study of the relations of vision and vision
communication to venture growth in entrepreneurial firms.)があるので、今度はそちらをご紹介します。