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【万葉集】春柳(巻十一・二四五三 柿本人麻呂
春柳葛城山に立つ雲の立ちても居ても妹をしぞ思ふ
(巻十一・二四五三 柿本人麻呂)
【解釈】
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春の柳を編んでカズラにする、その葛城山(かつらぎさん)に立つ雲のように、立っていても座っていても君のことを恋しく思ってばかりいる。
作者は柿本人麻呂。
現代語訳を書いてみたものの、わかるようなわからないような歌ですね。
前半は、ある程度の技巧的な解釈が必要です。
春の柳は輪っかにして髪飾り=鬘(かずら)にするというところから「葛城山」を引き出す枕詞。さらにその「葛城山に立つ雲の」までが「立ち」にかかる序詞になっています。ややこしい。
でも、そういう解釈は抜きにして、歌われている情景をそのまま想像してもなかなか美しいのですよね。
よく晴れた春の日、新しい緑の柳の木がやわらかく風にそよいでいる。
遠くに見える葛城山には、白い雲が立ち上っている。僕の思いもあの雲のようにわきあがっていく。君のことばかり考えて何も手につかないのだ。
そんな解釈でも良い気がします。
「葛城山」は大和葛城山のこと。標高は959.2メートル、奈良の御所市と大阪の千早赤阪村の境にある山です。大阪で一番高い山なのだそうですね。
遠まきに眺めたことはあるけれど、登ってみたことはありません。
ロープウェイがあり、ツツジの名所。春は特に気持ちよさそうなところです。
柿本人麻呂が眺めた葛城山の風景。今の風景も、あんまり変わっていないのではないかしら。