【マウント】第4話「炎上」
私刑女子たち(燃やす!?どういうこと?)
私刑女子たち(放火!?やばいよ!それはさすがに!)
私刑女子たち(ユキノの持ち物を燃やすとか…?)
私刑女子たち(髪の毛に火をつけるとか!?)
『ちょっと!怖いことしないで!』
『事件になるようなのはダメ!』
『大丈夫』
私刑女子たちは不安になりながらも
誰が書き込んでいるのかわからないこともあり
見ているしかなかった。
その夜、スレッドに新しい書き込みがあった。
『完了。シーザーサラダ1個』
そして謎の英数字が並ぶ。
シーザー暗号で1文字ずらすとURLになるものだった。
そのページを見た私刑人たちは驚く。
ユキノ名義のSNSに彼女のセクシーショットが山ほど載せられていた。
『うわ!マジ!?やっばwwww』
『燃やすって「炎上」って意味かwwww』
『これ、合成?』
『当然。』
偽ユキノSNSには写真と一緒にこんな文章も掲載されてあった
「私はみんなの風紀委員です。
元気な男性の皆さんがいけないことをしないように
私が皆さんにご奉仕しています♪」
「私に直接会えないみんなは
私の写真で、スッキリしてね(ハート」
写真はよくある「かわいく見える加工」がされていたが
おかげで合成にも違和感がなくなっていた。
「今日は3人の男性をお救いしました。もちろんご奉仕なので無料です♪」
写真自体は「セクシーポーズで自己主張女子」のそれだったが
文章と相まって「ご奉仕女子の日記」に仕上がっていた
『日付だいぶ昔のになってるけどどうやったの!?』
『元々あった鍵垢。いくつもあるうちの一つ。それ使った』
※垢=アカウントのこと。ネットスラング
『やっばwこれ知らない人にはただのセクシーアピールで釣り狙い垢だけど
知ってる人にはYの顔だってまるわかり!』
『すっごい出来!』
『技術の無駄遣いw天才!』
私刑女子たちは大盛り上がりだった。
『YとMにメールする』
その文章が書き込まれた後
ユキノとマサキの所にこのSNSのURLと共にメールが届く。
マサキ「な!なんだよこれ!」
マサキへのメールには次のような文章がつけられていた。
『ユキノのSNSを見つけました。
これが彼女の正体です。
学校では真面目な風紀委員長のふりをして裏ではこんなことをしてる子です。
関わらない方が良いですよ』
マサキ「ふざけんな!運営会社に通報してやる!」
ユキノの方にも文章がつけられていた。
『マサキと関わるな。従わないと、出会い系に載せる』
ユキノ「く…サイバー攻撃ですか…こういう手も予想はしていたけど…
まったく…こんな画像を作れる技術を持っててこんなことに利用するなんて
なんて馬鹿な人たちなの…
でも…こんなのどうすれば…
あれ…?」
ユキノが見ていると、偽ユキノのページは消えた。
電話がかかってくる。
ユキノ「(マサキさん?)はいユキノです」
マサキ「お前の所にもメール来た?」
ユキノ「…ずいぶんグラマーでセクシーで奇麗な私の写真のページを作ってくださったようですね」
マサキ「俺がSNSの運営に通報した。
ああいう18禁内容の掲載は規制が厳しいんだ。
幸い犯人が成人年齢で登録してなかったようだ。
すぐに削除してくれたよ。」
ユキノ「あなたが対応してくれたのですか…」
マサキ「お前を守るって言ったろ?」
ユキノ「…ありがとうございます。
正直…どうすればいいのかわかりませんでした。
…あなたはあれが私だって信じなかったんですね…」
マサキ「当たり前だろ!
あんなの一目見たらユキノを騙った偽垢だってわかる!」
ユキノ「…………」
ユキノは泣きそうなのをこらえていた。
それがマサキにも伝わったようだ。優しい声で言う。
マサキ「…俺も男だからさ…恥ずかしいけど…あれが合成写真だって証明できるよ」
ユキノ「…………?」
マサキ「ちゃんと守るから、心配しないで!」
ユキノ「は、はい。あなたを信じます」
掲載されていたのは数時間だったが、見た人は結構いた。
翌日学校では男子生徒を中心に噂になっていた。
男子生徒「あれってユキノだよな?」
男子生徒「スタイルいいのな」
男子生徒「ご奉仕って…そういうことだよな?」
男子生徒「俺もご奉仕してほしいぜー!」
男子生徒「でもなんかあの写真さ…マジでユキノなのか?なんかひっかかるんだよな…」
男子生徒「エグイ加工してたけどユキノだろ!」
マサキ「加工っていうか合成だよ。」
マサキは男子生徒の噂場に乱入する。
男子生徒「合成?」
マサキ「俺も見たけど…………ほら、これじゃなかったか?」
マサキがみんなに見せたのは
セクシーショットを掲載することで有名なコスプレイヤーのアカウントだった。
男子生徒「あああ!これだよこれ!どっかで見たことあると思ったんだよ!」
マサキ「俺もそう思って検索したら、ほら、このまとめサイト」
男子生徒「うわ!全部ここに載ってる写真の首挿げ替えただけじゃねえか!」
男子生徒「ユキノなにやってんだ?」
マサキ「ユキノじゃない。あいつは機械音痴だ。
俺ほら、あいつに教科書見せてるじゃん?
情報の授業も、美術で画像処理やった時も、さっぱりだった。」
男子生徒「言われてみれば…あいつが作るポスターって全部手書きだよな…」
男子生徒「うん。イラストもフリーイラストサイトの画像印刷した奴、糊で貼ってるよな…」
男子生徒「字がきれいだから気にしてなかったけど…アホみてーにアナログだよな…」
マサキ「マジでできないんだよ…俺もびっくりした。
教科書の内容は暗記できるからテストは成績良いけど技術はゼロだ。
バカにしてるみたいで申し訳ないけど…あんなの作るのはハッキリ言ってユキノには絶対無理だ。」
男子生徒「わざとできないふりしてるとかは?」
マサキ「成績優秀だってこと誇りに思ってるようなクソ真面目な奴だぜ?
わざわざ評価落とすことするかよ。
それにあのアカウント、ソース見たら書き込み内容修正のログが残ってて…スクショしたの見てくれ。」
マサキは修正記録のスクリーンショットを見せた。
使われていたSNSでは内容の修正記録が見れるようになっていた。
誹謗中傷を書いては消すとかヤバい写真や情報を時間指定で上げて数分で消して隠蔽するとか
そういうのを「なかったこと」にできなくするためとか色々理由はあるんだろう。
男子生徒「全部おとといの日付で修正されてるな」
男子生徒「誰かがもともと持ってたサブ垢とかを使ってユキノの偽SNSに仕立てたってことか?」
男子生徒「…あいつ最近イジメっぽいことされてたもんな…」
男子生徒「ん?このソース…登録者のプロフィールもあるな…男じゃねえか!」
男子生徒「住所海外だってさ。自己防衛で偽情報登録することは多いけど…いかにも捨て垢だな」
マサキ「あのアナログクソ真面目ユキノがSNSやってて、こんな偽プロフィールで登録できると思うか?」
男子生徒「ていうか、合成写真作って自分がエロいことしてるって内容のSNS作るって
金目当てならともかく無料ご奉仕って…ユキノに得がなくね?」
男子生徒「イタズラだな…」
マサキ「もし他の生徒や他校の友達とかでユキノ本人だと思い込んでる奴が居たら
『騙されてる』って教えてやってくれないか?
俺は一瞬騙されて、マジで腹が立った。」
男子生徒「そっか!俺たち騙されたんじゃん!そう思うとムカつくな…!」
男子生徒「騙されてるやつ見たら教えるわ!」
マサキ「おう、頼む」
マサキのおかげでうちの学校はもちろん
近隣の学校にも「あれはユキノを嫌ってる誰かが作った偽垢だ」と言うことが知れ渡った。
犯人たちは炎上どころか秒で鎮火したしたことに苛立っていた。
『どーなってんの!?』
『あっという間に消されたし!』
『あの垢は、愚痴垢だったから、少年法が効く年齢で登録してた。
誰かに通報されたっぽい』
『バカ!そんな垢使うな!』
『誰!?余計なことしやがって!』
『つか、数時間でも見た人は居たと思うけど?』
『クラスの男子が合成だって騒いでた』
『なんでバレたの!?』
『有名コスプレイヤーのやつが入ってた。
男子なめてた。そういうの結構見てるっぽい。』
『問題はMだよ!彼さえ信じてくれたら』
『MとY、いつも通りに教科書見合ってる』
『Mも男子から合成だって聞かされたんじゃ…』
『すぐ消えちゃったからYは見てないのかも…』
『SNSの運営から警告来た。これ以上できない。作戦失敗』
『いっそマジで出会い系サイトに載せれば?』
『合成写真はよくできてたよ?』
『加工元の人に運営から連絡行ったっぽい。怒ってる。私がヤバい。BADEND確定する』
『ちっ』
『アングラなサイトじゃないとセキュリティちゃんとしてる。
でもアングラは誰も見ない』
『サイバー系はだめだね』
と、次の私刑を思いついたメンバーが書き込む
『体育 事故』
<第5話に続く>
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