なぜ低気圧の日に私は片頭痛になるのか。
私は低気圧の日に片頭痛を発症する傾向がある。
片頭痛と言っても症状は様々だろう。私の場合はこんなかんじだ。
よくある医学的な原因としては、気圧の変化により三半規管が刺激されることにより自律神経が乱れ、三叉神経付近の血管が縮小後に膨張し、三叉神経を刺激するという。
ではなぜ片頭痛を持つものと持たないものが存在するのか。
なぜ私に片頭痛が起こるのか。
私の父は沖縄本島のすぐ北に位置する与論島出身、母は種子島出身だ。遺伝子的血脈としては殆ど島人(しまんちゅ)と言える。
島人は有史以前に海を越えて日本に到達し、海の資源に依存してきた。海へ出なければ資源は得られないが、海へ出るのはリスクである。船は幾度と無く嵐の海に飲まれたことだろう。
嵐は低気圧により生じる。
温帯低気圧。爆弾低気圧。いずれも雨や風を伴う気候条件だ。人間の遺伝子の交雑の過程において、低気圧の影響により片頭痛となる性質の人間がたまたま生まれる。
島人の生活において船出は欠かせないが、片頭痛を持っていては海へ出られない。
結果的に嵐の海に船出するリスクを避けることになった片頭痛を持つ島人がぼちぼちと増えていく。片頭痛持ちと片頭痛持ちが結婚し、なおさら低気圧に敏感な人が生まれる。なんなら「あいつが片頭痛になったら嵐が来るぞ」くらいの勢いで雨雲レーダー扱いの巫女的な人物も出てきたことだろう。
その末裔が私である。
私の名字「佐田」という漢字は元は「貞」であった。貞の意味は貞操など、「正しい」という意味もあるが、古代中国では占うという意味もあった。「それが正しいかどうかを決める占い」という意味合いが転じて「正しさ」という意味に転化したのである。
リングの貞子(テレビの中のあいつ)や呪術廻戦の蘆屋貞綱(平安時代の呪術師)など、フィクションにおいて呪術的なイメージのキャラクターに「貞」の字が用いられるのはそのためである。
私の祖父が与論島から鹿児島へ移住した際に何か思うことがあったのだろうか、漢字を「貞」から「佐田」へ改めた。当時は「貞」の名字に対する職業差別的なイメージや島人に対するいわゆる部落差別的な風習も残っていたことだろう。
そのようにして私は「佐田」となったのだが、遺伝的血脈としては「貞」のままであり、家族には片頭痛もちはいないのだがどういうわけか私に強く受け継がれたのだ。
このように点在する事実や何の科学的根拠もない憶測を殆ど無理矢理に繋げることで「私が片頭痛を持っているのもまあ仕方ないか。」などと受け入れるための物語を作っているのだ。古事記を読んだら熊野国がなぜ熊野という名になったのかもまあまあ頷けるように。
というような事を片頭痛で寝込んでいる日は考えている。