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スターバックスとMacBookと私。

私はスターバックスに割と行く。

どこにでもあるからだ。

出先での隙間時間や飛行機の待ち時間など、タイミングは様々だ。

店内に入るとシアトル系のインディーロックバンドの音楽が流れている。レジカウンターの女子が小気味良い笑顔で「こんにちは」と言って、私は「こんにちは」と返す。店内は禁煙。サンドウィッチも美味しいし、飲食店独特の油の匂いもしない。

今朝は自分で淹れたコーヒーを飲んでしまったので、私はミントシトラスティーを注文し、早々にサーモンとクリームチーズのサンドウィッチを食べ終えると、テーブルにMac Bookを広げる。そしてミントシトラスティーを飲み終えるまでの時間を使って事務処理をする。

というのも、事務処理というのは日々の締切日のある仕事が優先され何かと溜まりがちなので、断続的な時間とパブリックな空間を利用して厳かに行うというのが私の事務スタイルとなっている。

近年はクラウド会計アプリが大変便利で、割と簡単に確定申告することができる。スターバックスに行けばWi-Fiもあるので、私が通うのはもはや必然である。

ふと他の席に目をやると、私のようにラップトップPCを広げている人々がちらほら。

私の中に問いが生じる。

皆は一体スターバックスでどのような仕事をしているのだろう。

とは言え、流石の私も人のディスプレイを覗き見るような度胸や一人一人インタビューして周るような行動力も無い。そもそもそんなことをしていたら出入禁止になりかねない。

そのようにして私は想像力を使って心の旅をする。

私の隣に座っているK-popを聞いていそうなセンター分けのストリート系ファッション大学生風の男性。卒業後はじめての一人暮らしに夢を抱きながら、明らかに予算を超えたデザイナーズマンションの不動産情報をひたすらお気に入り登録している。

テラス席で銀縁の眼鏡を輝かせながらリズミカルにタイピングしている不動産関係風の女性。顧客への見積もりを作成中に友人の人生相談LINEに乗ってしまい、旦那の愚痴に小一時間ほど花を咲かせている。

店内奥のソファー席でツイードのジャケットを着こなし、グレイヘアーを綺麗に整えた紳士。妻と娘二人が住む家庭ではすっかり居場所を失い、スターバックスに束の間の癒しを求めてAmazonプライムで映画「サウンド・オブ・ミュージック」のワンシーン「Sixteen Going on Seventeen」を見ている。

ミントシトラスティーを飲み終えた。

私は紙ナプキンで口を拭き、マグカップを下げ、予定していた事務処理をよそに、心の旅という私事を終えてスターバックスを出る。

このようにしてスターバックスでMac Bookを持ち腐れがちな現象を「スターバックスとMac Bookと私」と名付けたい。

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佐田宗義
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