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草食ったさん著「境内の樹木」への感想

境内の樹木/草食った

草さん、ご参加ありがとうございました。とてつもなく返事が遅くなってしまいすみません。何かの機会に読んでいただけたら嬉しいです。

最近、植物の時間感覚に「一日」という単位を持ち込むのはいかん気がする、と思って、それからこちらの作品を読み直しました。すると、やっぱり一度たりとも一日単位の会話はなく、会話は擬人法を使って馴染みやすく調整してあるのだけれど、時間的に見ればしっかりと植物そのものの時間を捉えて書かれた作品なのだ、とはっきり認識することができました。やっとこの作品に私の頭が追いついてきた…。
彼らは一日という単位を理解はしていても、彼ら自身の生活と成長は一日でどうにかなる物ではない。その時間感覚の要点をハッキリ掴んでいて、本当に流石です。

文体そのものでは、クスさんのおじいちゃん感と苔の若々しさの対比が会話だけでよく描かれていて、かつ「老いも若木も」というドンピシャの洒落も言葉のセンスを感じさせて、読み返しながら、やっぱり草さんの軽やかな文体好きだなぁと思いました。

鳥居を何も塗らずに真っ白な(おそらく無垢材のまま?)建てていたり、ちょっとずつ常識から外れた振る舞いが人々にあって、それもまた草さんの心根の優しさなのかという気がします。あるべき物をあるべき姿で存在させるのは製作者の特権で、それを遺憾なく発揮されていて素晴らしいです。

最後の「寂しくはないよ」という言葉も、寂しいからこその反語のようにも思えるし、クスさんの新しい姿を前にそう決意する勇気ある青年の一言にも思えるし、ここもまた上手いなと思いました。

大変遅くなってしまった感想でしたが、気持ちを返すことができて勝手にホッとしています。
改めて、ご参加ありがとうございました。

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