「だってみんな生まれてきたじゃん」
誰も悪くない
初めてあった時ものぎたはそう言っていた
雨の降る夏の日、
彼のおかげでみなは悲しまずにすんだ
僕は感謝している
彼はなんだか異質だ
街で見ると世界から浮いている
明らかに風景に馴染んでいない
その背中は少し寂しそうだった
それから週一ぐらいで来るようになった
ひとつだと思うんだけどなぁ
ある時彼はそう言った
殺したくて殺してるわけじゃないし
ゴミ捨てたくて捨ててるわけじゃないし
ただ吐き出したいものがあるだけで
傷つけたいわけじゃないし
誰も悪くないっていうか
みんな目指してるとこは一緒じゃん?
なんで殺しちゃうんだろうねぇ
そう訊くと
ただそこにそれしかなかった
んだと思うよ
そう言った
まるでのぎたではないみたいだった
のぎたを通してだれかと喋っている気がした
のぎたって呼ぶと返事したので
多分のぎたなんだろうけど
人間に共通するものはあると思う?
僕は訊いてみた
あるやろ、と言った
「だってみんな生まれてきたじゃん」
わたしたちは根本的にお互いを許している
そうでなければ存在する事すらできない
どこかで聴いたそんな言葉を思い出した
どうしようもなく違うこと
どうしようもなく孤独なこと
どうしようもなく足りないこと
誰かが決めた法律に同意した覚えはないけど
そこには同意して生まれてきたそんな気がした
知らんけど