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時は元に戻せないなら

突然の別れ。後から響いてきます。忘れられない。振り払おうとしても、絡みつく。取り戻すことのできない過去。どうして、時間というものがあるのでしょうか。

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やっぱりやめよう。こんなことしても、あの人が帰ってくるわけじゃないの。思い出してツラくなるだけ。セラピーもヒーリングも、あたしには、ただの慰めだったでしょ。

が解決してくれます。最後に、そう言われて終わりだった。あたしの気持ち、あなたにわかりますか。叫びたくなる。

『こんにちは、フジミドリです』

 🌿 🌿 🌿

『あ。今日はホワイトデーでしたね』

一瞬、頭の中が真っ白になる。ええ、そうですねと答えながらも、戸惑いが浮かぶ。なにこの人、フザけてんの、そう思ってしまう。溜め息が出る。聞こえたかしら。

『フジミドリの由来って、ご存知ですか』
「え。名前のですか。いえ、知りません」

『フジミドリって、在り方革命の三部作を書いた人なんです。私はまぁ二代目と言うか、後を継いで、こうしてお読み下さる方のご相談をお受けしております』

ああ。そう言えばそんなこと、どこかに書いてあったかも。はぁ。そこまでいちいち、他人のことなんて気にしてられないわ。

『奥さんを病気で亡くして、3年ほど経ったら、明け方に妖精が見えたんだそうです』

 🌸 🌸 🌸

「妖精って、あのファンタジーとかの」
『はい。うーん。いや、ちょっと違うか』
「ディズニーのアニメとかですか」
『ただ、キラキラ光ってたらしいですよ』

ふーん。そうなんだぁ。妖精ねぇ。見れたらいいけど。へぇ。天井の隅に出たんだ。

ミドリさんの声が、聞こえたそうです』
「あ。奥さまのお名前だったんですね」
『バレンタインの代わりよって』

不意に込み上げてくる。唇が震える。止まらない。何か言わなくちゃ。でもダメだ。最後のチョコレート、贈れなかった。

 🍫 🍫 🍫

ただの風邪かと思ったけど、あんまり様子がヘンだから、クルマに乗せて病院へ連れてくと、それきりもう会わせてもらえなかった。何度も何度もお願いしたのに、とうとう最後まで、会わせてもらえなかった。会いたかったのにな。

大丈夫ですか。なわけないですよね』

宇宙人のアイコン、首を傾げてうなだれる。アイシールドで目は見えないけれど、なぜか悲しそうな表情に見えてしまう。気がつくと私は、のことを話し始めていた・・・

ツラいですね。何言ってるんだ、オレは。スビバセン。当たり前ですよね。ツラいに決まってる。でも、なんて言うのか』

 🌁 🌁 🌁

後悔してる。なんであんなこと言ったの。どうしてもっともっと、優しくできなかったかな。時は元に戻らない。いくら後悔しても。どうして、戻せないのかな。戻してよ。

『いえいえ。そうではありません。あんなこと言わなくてもね、もっともっと優しくしてもね、やっぱりあなた、後悔するのです』

ハッとする。考えたこともなかった。あの時に戻ることさえできれば、今度はちゃんとやり直せる。それしか考えてなかったのだ。

『時は戻せますよ。今、旦那さまを思っていらっしゃる。目を閉じればその姿が浮かび、耳を澄ませば声だって聞こえる。今ここで、あなたはその場所にいらっしゃる』

 🌕 🌕 🌕

あたしは、そこにいる

浮かぶよ。あの人の顔。聞こえる。あの人の声。感じる。触れ合った肌のぬくもり。なんだろう。ヘンなことばかり思い出しちゃう。しかめた顔だとか、驚いた声だとか。

くすっと笑う。泣きながら笑う。何か言わなけりゃ。涙声になっちゃう。でも、かまわない。不思議ね。これまで、人前では泣かなかったのに。泣かないようにしてたのに。

泣いたら壊れちゃうから

「時が解決してくれる。そう慰められたんです。でも、あたしね。あたし、どうしても、解決できない思い、あるんです。これって消えません。消えてくれないのです」

切なくて、苦しくて、どうしていいかわからない。どうすることもできない。ううん。どうにかしちゃいけないんだって思う。

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『大丈夫です。何も心配いりません。解決しなくていいのですよ。そのままでよい。安心して悲しみに浸って下さい。だってそうでしょ。悲しむのは、愛しいからです』

ああそうか。あたし、悲しんでいいんだ。泣いていいんだ。慰められて、元気づけられ、寄り添ってもらえて、その時はとてもとても嬉しかったのだけれど。

でもやっぱり、ひとりになると、この悲しみは誰にもわからないって思っちゃう。似たようなことは、誰にだってあるだろうけれど、でもやっぱり、あたしにしかわからない。

『どうでしょう。おひとりで悲しくても、でもなんかこう、ひとりじゃない感じってありませんか。なんというか。包まれるような。優しくあたたかく柔らかく』

 🍀 🍀 🍀

わかる。そういうの。背中からフワッと。ヘンね。いつもは、そんなことないってムシするんだけど。こうやって、言われてみると、なんかこれでいいのかもって。

「いけませんよね。死んでからも、心配かけちゃ。しっかりしなくちゃ。ホントあたし、心配ばかりかけてたな。あの人、心配で安らかな世界へ逝けませんよね」

『いやいや。いいんです。あなたは、悲しんでいいのです。旦那さまが、心配で次の世界へ逝けなくたっていいのですよ。だって、あなた以外の誰が悲しむというのですか』

 🔮 🔮 🔮

ああ、なんだろう。
包まれている。
あたしの輪郭が溶けていく。

 🌈 🌈 🌈

次回3月21日午前10時頃です💖

今回のクライアントさん、この曲を聴き込むうち、浮かんで参りました。以前、ご相談を受けた方のご体験談とリンクしたようです。

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