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#短編小説

【短編小説】くちなしの死体は語る

【短編小説】くちなしの死体は語る

 梅雨前線はしばらく関東に停滞するだろう、との予報をネットニュースで確認し、鍋島は顔をあげた。
 白色の蛍光灯が照らす八畳間は珍しくすっきりと片付けられている。それはやはり珍しく事前に訪問の連絡を入れたおかげかと思われるが、つまり今現在奥で煙草をふかしながら机に向かっている男は来客があれば人並みに部屋を片付ける人間だという事実のあらわれでもある。正直なところ、整理整頓が苦手なタイプだとばかり認識し

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