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「映」という名のあの人は

もう私には実家と呼べる家はない。
母も施設。父とも絶縁。
いや…そんな書き出しは重いって(笑)

父方の縁者とは疎遠になってから、もうどのくらい経つかわからない。
血のつながりが薄くなっていくのを…いやちがうか、遠くなっていくのをかんじながら何処かに流されていっている。
どんぶらこっこ…どんぶらこ。
誰にも気付かれないで海まで流されて消えたいような。
煩わしかったから、遠くなってよかったあ〜…と思いながら。
ああ…もうもどれないなぁと身勝手な感傷にむねがざわついて、居心地がわるい。居心地が悪いのだけど、なぜか脳裏にざらつく父や父方の祖母のこと。

きっかけは父の名前。
「映」って1940年代生まれの人につけるんかな〜。「映」って由来どっからきてるんだろな~。もっとその当時流行りの「えい」ってあったんじゃないかなぁ…。と小さい頃からなんか気になってた小さな疑問をなぜだか思い出したから。

ギュルギュルギュルギュル〜っ…と記憶を高速回転させて巻き戻す。(映画アメリのような巻き戻しを想像してお楽しみください)
あ…っ!…と…小4のわたくし…隣に住んでいた祖母からもらったお古の映画雑誌を読んでいます!
表紙は誰でしょう?…時代を感じます。
ブルックシールズですよ?「青い珊瑚礁」って映画に主演してた金髪碧眼のキレイな女優さんです。
無人島に幼馴染と漂流して、何年も暮らすうちに夫婦になって(いや…本能に従ってか…)赤ちゃんまで産んじゃうんですよ。(助けの船が来て無人島を脱出して映画はエンドですが…あの2人はいや家族は幸せになれたんだろうか…)
あ、話しが脱線事故。
祖母は映画雑誌を買う程映画が好きってことだよね……映画…映…!?
映画の【映】か!?
もしかしなくても!

はあー…スッキリ。

そうかそうか…。

昔はというか、私が子供の頃も娯楽は少なかった。
ド田舎だし。
何かというと映画を見に連れていってもらった気がする。
オールナイトや2本立てや3本立ての上映が当たり前。
座席指定の入れ替え制なんてないし、上映中の出入りも自由、立ち見もあり。
一日中見ていられるものだったし、今より敷居が低かったのだ。
だから…なんというか色々な人がいて、小さいながらに猥雑さを感じていた。
駅前には成人映画の映画館が堂々と鎮座していたものだ。(高校生になるまであったんじゃないかな)
もちろん、家族で見に行くのは普通の映画館。
よく覚えてるのは「セーラー服と機関銃」を家族で見に行ったこと。
土曜日のナイト上映だったから、見慣れないネオンや人混みにワクワクしながら映画館に入って同時上映が「青春の門」で衝撃だった(若かりし佐藤浩市さんが主演していた青春映画)

祖母が付けた父の「映」と言う名前は、私にも「映画好き」のDNAを受け継がせたらしく、中高校生から結婚するまでの間は趣味は映画鑑賞。
上京していた頃はどっぷりとミニシアター系に通いまくっていたなぁ…。

私の名前に「映」の文字はないけれど、どうやら血脈の何処かには流れているらしい。
…それは息子たちにもか。
サブスクでいつでも映画を観れる時代に。わざわざ金曜日ロードショーをチェックして、兄弟揃って見てるのを見ると不思議な気持ちになる。

2人は私の父や祖母に会った事はないのにね…流れてるんだなあ…あの家の血が、と思う。

【映】の名のつくあの人は、生きているのか、死んでいるのか、どこにいるのか。
…知りたくない。知りたくない。まだ知りたくない。

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