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ウィスキーを飲んでいた頃の話【エッセイ】

最近ほどんど晩酌をしなくなりました。
タバコも吸わないし(随分前に止めた)、ギャンブルもやらないので(すごく弱い)、真っ当すぎて逆に大丈夫なのかと不安になってきます。
現在、手を付けている唯一のいかがわしいことは、こうやって夜な夜なnoteにエッセイを書いていることくらいです。

でも独身時代はよくウイスキーを買って飲んでいました。
今でもシングルモルト、特にアイラ・モルトは大好きです。「アードベッグ」とか「ボウモア」とか、ピートの強い銘柄に惹かれます。
飲み方は「トゥワイスアップ」。シングルモルトと常温の水を、氷なしで1:1で混ぜます。昔、村上春樹の『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』を読んで知った飲み方で、馬鹿の一つ覚えのようにこればっかり作っていました。ウィスキーの味がよく分かるというのもありますけど、一人で作るときに面倒くさくないのがいいんです。

下北沢に住んでいた頃は、近くに信濃屋という大きな酒屋があったので、月に一本、シングルモルトを買って味を勉強していました。
入門書を読んで知識だけは一人前だったので、生産地ごとに飲み比べをして、一人で悦に入っていましたね。やっぱりスペイサイドは全体的にレベルが高いけど、ちょっとお行儀がいいかもなぁとか、ローランドはパンチが弱くてちょっと好みからは外れるなとかね。まあ鼻につきますが、一人でぶつぶつ言っていただけなので勘弁してください。

日曜日の午前中から、ワンルームマンションの小さなキッチンでトゥワイスアップを作り、iTunesで適当な曲を流して、好きな本を読んでいました。こうやって文章で書いてみると、ちょっと格好いいかもですね。独身男の自由と孤独が背中合わせにある感じというか。
実際のところは朝から酔っ払っているだけなんですが、一応の「スタイル」を作ることで、身を持ち崩さないで済んでいるのでしょう。
シングルモルトだから成立する世界であって、これが芋焼酎だとやっぱり駄目なんでしょうね。(芋焼酎も好きです)

下北沢のバーにもたまに行っていました。
仕事でお世話になっていたプロデューサーも下北沢に住んでいたので、仕事終わりによく連れていかれてました。プロデューサーは全然シングルモルトを飲んだことがないというか、むしろ苦手という人だったのですが、ぼくがシングルモルト好きということを知って、勉強したくなったみたいです。
簡単に好みを聞いて、マスターと一緒に色々と選んだのですが、どれもいまいち合わないといった表情。ぼくの少ない経験からですが、シングルモルトに挑戦してピンとこない人には「ハイランドパーク 12年」を飲ませるとだいたい納得してくれます。プロデューサーも「ハイランドパーク 12年」だけは、うまいうまいとえびす顔で飲んでいました。困ったら「ハイランドパーク 12年」です。覚えておいて損はありません。
(久しぶりに検索してみましたが、2021年にリニューアルしているんですね。味が変わってないといいけど)

そのバーには度々通っていたのですが、たまたまお店の何周年かの記念日にドアを開けたことがあって、その日は「どの銘柄でも最初の1杯だけは500円」というサービスをしていました。マスターの太っ腹な心意気ですが、ぼくはその時、調子に乗って「ジョニー・ウォーカー ブルーレーベル」と口にしてしまったのです。1本2万円前後する超高級ウィスキーです。
いくらサービスといっても、頼んでいいものと悪いものがあります。
マスターは長年の客商売で鍛えた笑顔で、カウンターの奥の部屋から「ジョニー・ウォーカー ブルーレーベル」を持ってきてくれました。でも絶対怒ってました。もしかしたらマスターの私物だったかもしれません。意地汚い酒飲みは嫌われます。美味しいウィスキーが目の前にあっても、後味の悪い行動はぜひ慎みましょう。

そんなわけで、ぼくは昔面倒くさがりで意地汚い酒飲みだったという話でした。今は酒飲みではないので、ただの面倒くさがりで意地汚い人になってしまいました。なんだか人間のレベルが下がったした気がします。おかしいなぁ。


昨日はタバコについてのエッセイを書いたのですが、ウィスキーについても書いていくうちにエピソードを思い出してきますね。
明日はギャンブルについて書いてみようかな。


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