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福祉施設のパン屋さん

娘が有休消化中だと、お互いに何となくのんびりしている。

休みなのだから、どうでもいいのだが、気合が無くて悪い事をしている気になる。

娘は新しい職場の為の洋服を買ったり、他にも必要な物を見に行ったりと忙しくしていたが、1週間以上もあると、そろそろする事も無くなってくる。

「明日何しようかな??山の方に散歩に行くか。」と昨日は、宣言していた。

それも良いと思うのだが、山って何処ってぐらい家が連なっていて、有った筈の山が見当たらない。

子供の頃にはこの近所に住んでいて、(短大に行くまで)よく山に行って、そこで遊んだりもしていたのだから、無い筈は無い。

だけど、この近所を見渡す限り、道沿いにぎっしり家が連なっていて、山って随分歩くのだったかな??近い気がしていたけどと❓❓❓を頭に浮かべている。

「山ってさ、無くなっていて、何処にあるか解らなくなってるんだよね。」娘に言う。

この辺で遊んでいたのは、50年ほども昔なのだから、そうなっても仕方が無いが、見えると思っていた景色が無いのは驚くばかりだ。

その娘が今日は山に行こうと思っていたけど、近所の散歩に行こうかなと話している。

『そうやね、家にいるよりも、外に出た方が好きやもんね。』と頭の中で同意する。

「ちょっと小腹空いたから、お菓子でも探しに行こうか??」続けて言うので、「それも良いかもね。」と答えた。

私も何がある訳でも無いが、大抵は本を読んだり、文を書いたりしているので、あまり外には出ない。

それでも、出かけるとなれば、腰を上げて一緒に行こうかなと考えるので、用意をした。

用意と言っても、カバンに財布やハンカチを入れるぐらいで、他に何がある訳でも無い。

直ぐに用意が出来たので、「何処にいこう??」と問う。

「近所にハズコーヒーって有ったやん、そこに行ってみようか??」彼女は行く所は決めていたみたいだ。

有給休暇中だが、スタバ店員だったので、彼女はコーヒーが好きだ。

だけど、ここの所は家でコーヒーメーカーで出したコーヒーを飲むだけで、外で飲むことが少なくなっている。

偶には外で飲むコーヒーも良いよねと考えて、2人でそのコーヒー屋に行く事にした。

外に「保険の相談が出来るカフェ」と書いて有るので、保険を商売にしている人が、趣味で始めたのかも知れないし、その反対かもしれない。

だから、コーヒーはハッキリ言って期待して居なかった。

だってね、ついでなんでしょ、じゃあ無理やんね、そんな思いが有ったからだ。

外から見ても、綺麗な店で、少ししかお客さんが居ない。

レジの近くにパンが置いて有って、見覚えがあるパンたちが並んでいる。

「こちらは初めてですか?」と女性が聞く。

「そうですね。」と答えると、説明に入る。

「この中のコーヒーの中から選んで貰って、アイスかホットかも決めて貰って、それを出すようにしているんです。」成程、少しだけど選択肢がある。

横のパンを見て、「パンも売って居るんですね。」と言うと、「少しですけど。」余り売りたいとも思って無さそうだ。

「ブルーミングさんのパンみたいですね。」と聞く。

「そうなんです、ブルーミングハウスさんのパンです。」と答える。

ブルーミングハウスさんはよく知っている、知り合いの社長さんと奥様が、本業を息子に譲った時に、始めたパン屋である。

息子の奥様と、会長になった元社長とその奥様が中心になって運営していた。

「わしらもな、これからは社会貢献しなあかんで、作ったんや。」と会長が自慢気に言っていた。

ここは障碍者支援施設で、入所設備もある事業所である。

会長も奥様も仕事として、ずっと続ける事が出来て、障碍者も出来るのは何だろうと思案して、パン屋になったと聞いている。

パン屋をすると聞いた時には、私達の会社はそれどころではない状態だったので、私達は単純に羨ましいな~と考えていた。

其処には、私達には知ることも無い苦労も有ったのかもしれないが、外から見るとそんな感じになる。

他人の芝生は蒼いのですよね。

そのパン屋が今でも福祉法人として経営されているのは、純粋に凄いと思う。

但し、昔会長に「これからは、障碍者も納税する時代になると言っている団体もありますよ。」と行った時の反応は、納得して居ないんだけどね。
(ちょっとの給与でも税金を取るという意味では無くて、税金を払うほどの給与を貰うという意味です)

「そんなん、納税できるんやったら、障碍者や無いやないか。」と聞いて、驚いたのは忘れていない。

そうなんだ、この方たちの障碍者の定義って、障碍のあるなしでは無く、給与を沢山取れるか如何かなのだな~。

何て少し悲しい気持ちになって、良い人なんだけど、ある意味で差別的でもあるのだなと感じていた。

折角、世間的には良い事業をしているのに、残念な気分になるのは、私の問題なのかも知れない。

感覚的に受け入れられないけど、実際に行動してその事業を永続させるべく頑張っているのは素晴らしい。

ガンバレ、福祉施設と言って置こう。



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内山祥子
文を書くのを芸にしたいと思っています。 頑張って文筆家になります。 もし良かったらサポートお願いします。 サポートしていただいたら本を買うのに使います。 ありがとうございます。