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古い業界にも新しい力が入るのだよね

私が住んでいる四日市は万古焼の産地で、私の親戚も商売をしている。

「ひいおじいさんは大正焼作って、万古神社に祀られとる。」というのが母の口癖だった。

母方の曾祖父が研究熱心で、焼き物については相当頑張っていたらしい、商売っけは無かったので、祖父は苦労したらしいが、私達は知らない所だ。

神社に祀られているひいおじいさんは、焼き物についてしか考えていなかったらしく、お祖父ちゃんは苦労していたと言うのが、親戚の集まりで出かけると耳にする話だった。

「ひいおじいちゃんはええ土があると、見に行くためにそこに旅行に行ったんやけど、売る陶器に拘りが有って、ちゃんとできてないと売ったらいかんと言われとったんやけど、お祖父ちゃんはちょっとくらい出来が悪くても生活の為やから売ってたから、ひいおじいちゃんが旅行に行った時にはええもん食べられたらしいよ。」

こんな話が笑い話として親戚の家で話されていた。

私としては大正焼を作ったって何???とか考えていて、その頃は知らなかった。

知り合いの陶芸家さんや本で知識を得て、大正焼は大量生産の手法だと言うのが分かった。

曾祖父が四日市の陶器(万古焼)を大量生産に向く様にしたと言うのが分かってきて。

そうか~、四日市の万古焼が大量生産で安くなってしまった原因を作った人がひいおじいちゃんか、と思ったのは親戚には言えないな。

曾祖父が商売をしていた頃は、大量生産で物を作って売ることによって、利益を得る時代だったから、この頃には正しい方向性だったのだろう。

折角確立した技術を、お金もとらずに教えて広めた曾祖父は、その意味では聖人で神社に祀られるのが相応しいのかも知れない。

私の曽祖父が貢献したからか、それとは関係ないのか、四日市は土鍋で有名になった。

土鍋と言えば四日市のが良いと言う位には有名だ。

ところがだ、私が子供の頃に沢山有った万古屋さん(四日市の陶器を作っている窯元の事をそう呼んでいる)は今では半分以下に成っているらしい。

四日市市としては、コンビナートやモーター企業や半導体生産の工場などの税収が有るから問題視して居ないかも知れない。

私は関係ない立ち位置だが、小さい会社が減ってゆくのは悲しいなと思っていた。

NOTEで文を書きだしてから、同級生に連絡を貰ったことがある。

娘が電気炊飯器を買おうとしていたので、安い炊飯器買う位だったら、土鍋にしたらと言った話を書いたら、「家は作ってるよ。」と有難いお言葉を貰った。

その同級生の好意で土鍋を手に入れて、娘も古い形を考えていたのか、「いやーこれって可愛いやん。」と喜んでいた。

何でも可愛いと言うのは、昨今の悪い言葉遣いかもしれないが、それでも可愛いかも知れない。

大阪に行った娘に、「土鍋の調子どう??」と聞くと、「ええよ~、土鍋早いし、美味しいし、オール電化やなかったら、炊飯は土鍋一択やね。」と答えた。

我が家はオール電化で使えないが、引っ越してきた当初は土鍋を持っていた。

でもオール電化で使いどころが無いので、泣く泣く手放したのだ、今更持って居たら良かったかなとか言っても遅いけどね。

その土鍋に危機が迫っていると言うか、もう既に危機である。

私の同級生も言っていたが、土鍋はペタライトという鉱石を使って作っている。

ペタライトは輸入に頼っていて、主な調達先がジンバブエの鉱山だった。

そのペタライトはリチウムが含まれていて、電気自動車の普及によって、世界的に需要が高まった。

そこで中国企業が鉱山を買収し、輸入がが出来なくなっている、同級生の仕事を辞めざるを得ない気持ちになっている様だ。

この前に無料の広報誌を見ていたら、ペタライトが無くても割れない土鍋を作る方法を考え出した企業が有るらしい。

ヘ~、ヘ~、と机を叩きたくなるが、若くして窯元を継いだ男性がシリカで割れない土鍋を作ることに成功したらしい。

シリカを使った土鍋の生産は特許も取って、広めていきたいと思っているらしい。

実は特許ってお金になると思っているかも知れないが、何処を特許にするかに寄るが、技術を全て特許にすると、簡単に使われてしまう危険性もある。

国内特許でも国際特許でも出願にはお金が掛る、料金が高すぎて特許にせずに使っている会社も多いと聞く。

この方も特許にしたのは社会貢献だという事だ、かいはつにも出願にもお金が掛るのだから、そこは社会貢献だと言うのは納得だ。

この方は内山製陶所の5代目の方らしい、若い力が新しい技術を作るのは有り難いな。

それでも万古の業界も年配者が多くなってきて、こんな風に上手く若い人が作っていくのは難しいんだろうな。

基本的に、ブランド化した伊賀焼みたいに、万古焼がブランドとして高い金額を設定できるようにならない限り、生産者は減ってゆく。

豊かにもならないのに、そこで続ける必然性は無いのだからね。

四日市は下請けの工場が多くて、自分の所でブランド化って難しいのかな??

分からんけど、頑張って欲しいと思うのは我儘なのかも知れない。

そう言えば、この内山製陶所って、前に会社をしていた時に間違って家の会社に手紙が入ってきたなー、我が社は内山製作所だったからね。




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