【小説】恋の幻想
「ただいまって、ここ自分の家か。」と言いながら、お兄さんが入って来る。
「ちょうど、朝ごはんにしようと思ってたんだよ。」と裕子さんが話しかける。
「あれ、二人だけで食べるつもりで買ってきた?」と困った口調で話しかけてくる。
「ちゃんと多い目に買って来てるから、一緒に食べようよ、まだ食べてないでしょ。」裕子さんは奥さんみたいだ。
「俺も買ってきたんだよな食べる物、温かい物欲しいかなと思って。」そう言えばハンバーガーの匂いがしている。
ぎゅっとお腹が痛くなるくらいに空いている、お腹が空きすぎると、人間お腹いたみたいになるんだ。
昨日は駅で待っていたから、食べるのも考えなかった、自分の為に何かをするのを、忘れていたような気がする。
「どっち食べるって決まってるか、温かい方だよね。」裕子さんはハンバーガーを並べている。
「コーヒーも買って来てくれたんだ、温かいコーヒーも飲みたかったんだよね。」裕子さんは私の方を見てくる。
「温かいコーヒー好きです、あんまり飲めなかったけど。」と答えて、コーヒーの方を見る、何処のコーヒーでも匂いがすると唾を飲み込む位好きだった。
「3人分買ってきたから、コンビニの方は冷蔵庫に入れておこう。」と良平さんが手に持って居る。
ハンバーガーもコーヒーも各自の前に置いて、頂きますと3人で言う、昔母がいた時には良くした光景で、今では忘れかけている習慣だ。
コーヒーのカップを両手で掴むとほんのり温かい、口に入れると丁度いい温度が喉を通る。
昨日は飲み物も取るのを忘れていたんだな、喉に通る感覚をゆっくりと味わっていた。
「たまには朝からハンバーガーってのも良いわね。」裕子さんは言ってくる。
「そんなとこしか開いてなかったんだよ。」と良平さんが答えている、帰り道に他になかったのかな、そう思った。
「コンビニが有ったでしょ、それじゃ駄目なの?」裕子さんも同じ気持ちみたいだ。
「良いけど温かいコーヒーを入れて3つ持って帰るの、コンビニだと難しいだろ、袋を売ってくれるだけだから。」
「ありがとうございます、美味しいコーヒー買って来ていただいて。」お礼を言う。
「俺が飲みたかったからね、気にしないで、コーヒー嫌いだったらどうしようと思ったけど、好きだったんだね。」優しさが入って来る。
「大好きです、最近は飲んでなかったから、嬉しいです。」体に染み入る様な優しさになんて返せばいいんだろう。
「寝て飲んで食べたら、何でもできるから。」ボソッと言葉が続いた。