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共同決定法とは何か?
子供の頃に、父親が分厚いファイルを持って帰ってきた事があった。
「お父さんそれ何??」と聞く。
「これはな、問題や提案を書いて貰ったもんなんや。」と返ってくる。
問題や提案なんて、学校みたいやなと思って、そう言ってみると、父親が頷いた。
「そうなんや、学校みたいにせなあかんと上が言うとってな~。」と思案顔になる。
後で聞いたところによると、ずっと現場で頑張ってきた父親が上の立場になって、そこで増えた仕事がそれだったらしい。
上の立場になったと言っても、現場の仕事もあって、若手の指導もある。
会社で終わらない仕事を家に持って来ていた。
それが改善提案書だった。
改善提案書って聞くと、改善の必要があると思う人だけ書くと考えがちになる。
ところがね、父親の会社では全社員何でもいいから書いて来いとなったらしい。
これって、当然立場が上の人が読むもので、上の立場になったばかりの父親も読んで、いい物だけをもっと上に(役員など)見せる様にする。
ちょっと待て、役員が忙しいのは解る、だけどね役員が言い出して始めた仕事は役員がせんかい。
出来んのやったら、その部署を作ってそこでやらんと、給与に見合った仕事をせんかい。
会社を経営していた時期には、いつも考えていた事がある。
自分が給与に見合った仕事をしているのだろうか??
もしかすると、自分の仕事は、これだけ分の給与に値しないかも知れない、良いんだろうか??という疑念だ。
これは普通の従業員は考えなくても良いと思う、考えなくてはならないのは役員の方だ。
そうは言っても、私の給与は8万から始まって、多い時でも30万程度だったので、経理と事務と人事、掃除と何でもしていたので、まあ良いんじゃないか位でしょ。
それは兎も角。
うちの父親が家に持って帰ってきて、先生の様にペラペラその案を見て、チェックをして会社に持っていく。
これって、サービス残業やん。
そんなことしなくても、現場を見たら良いんじゃない。
子供の私でもそんな考えが浮かぶのに、役員さんは浮かばんのかな、素朴に疑問が浮かんでいた。
ドイツでは共同決定法が有るらしい。
2000人以上を雇用するドイツ企業は、役員席の半分を雇用者から選出の代表のために確保しなければならない。500〜1000人を雇用する企業の場合は、3分の1を確保しなければならない。
これは、経済における民主主義を実現するための手段で、随分古い時代から制定されていたらしい。
内容としてはこうである。
監査役会に労働者代表を置く
労務担当取締役の任免には労働者代表の同意が必要
労働者代表は企業経営に関する意思決定に参加する
自由経済の国で、そんな事をしたら、従業員の給与が大幅に上がってしまう、という人も居るかもしれない。
研究では、共同決定が賃金にはそれほど効果がないことを発見したのだそうだ。
企業役員会での労働者代表制が、労働者への収益割り当ての減少、賃金と生産性の相違、あるいは役員報酬と平均的労働者の給与のギャップを逆転させるという点ではほとんど効果がないかもしれないと考えられているらしい。
では労働者を役員室に入れて、何が変わったのだろう??
店員や販売員は、顧客の欲しいものがなにか、買い手たちがどのように買うものを決めるかを知っている。
組立ライン労働者は、製造の速め方と不具合の防ぎ方を知っている。技術者は製品の再設計の仕方を知っている。
これはオフィスに座って、その業務とは離れた人間には解らない事になる。
なので、ビジネスまたは製品ラインが苦戦すると、業務レベルでの問題に取り組みもせず、それを売り払うか縮小する。
それが、労働者を役員室に入れたことによって、全要素生産性(TFP)は上昇したという証拠があるらしい。
労働者代表が役員席に着いたことで、株主価値もおそらく高まったのだそうだ。
この法律が、株主の支配力を弱めるための法律だったのだから、皮肉なものである。
さて今の日本はどうだろう??
現在の日本は役員室のみで決定がされている、無論株主の意向も憂慮されるのだろうが、大事な決定は役員室の中のみだ。
イノベーションを考えずとも、海外に輸出すれば、消費税の還付がある。
日本人に売らなくても、海外に輸出した方が利益が有るのであれば、(消費税の還付には税金は掛からない)日本人が豊かになって買ってくれなくても、大企業は生きる事は出来る。
じゃあ、リスクを取って迄新しい業態を考えたりしない。
30年の間に売り上げに掛かる税金は減っているからね。
会社をしていた時期に、親会社の役員の人の話を聞いた事がある。
通産省の薦めも有って、中国進出を役員の大半の賛成で決めた、ところが中国の人件費の高騰や、中国での作った物の売り上げが上がらない。
安くなったのにである。
得意先に聞くとこう言われたらしい。
「中国製なら他でも買える、オタクに注文していたのは日本製だったからだ。」
これには頭を抱えたそうだが、それでも皆が『皆で決めたんだよな、仕方ないよな。』と言い合っていたという。
考えずに楽に利益が上がる仕事は無い。
それを、大きい企業がもう一度考える必要があるのではないだろうか。
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