【小説】SNSの悪夢
さて何をしたらしいか、立花は先ず家を何とかしなければと考えた、そこは早くしなければならない。
直ぐに今住んでいるマンションの片づけを大急ぎで始める、それほど荷物は無かったと思っていたが、人間が2人住んでいるとそれなりに荷物は多い。
電化製品に凝る方では無かったが、電化製品もあるな、炊飯器やコーヒーメーカー、冷蔵庫、テレビ、洗濯機、考えていたよりも使っている。
生活をする事は物を増やすんだな、1人暮らしなら物は増えないが、それは生活とは言えない。
1人でも生活をしている人間は居るんだろう、だけど殆どの場合は寝るだ健保場所だ。
そこで誰かと時間を紡いでこそ、生活をしているんだと今は思う、実際に居なくなる迄は解らなかったのだが。
キッチンにも道具が有って、それはこれからは少ししか要らないから、ある程度捨てるとして、食器戸棚は如何したらいいんだ。
「この食器を入れる物が無いよ。」彼女が言ったから買った食器棚だ、気に入っていたけどそれも忘れたのだろう。
嬉しそうな顔で、この食器棚に沢山食器を入れて食事を楽しみたいね、腕がなるな~、とお道化ていた。
女は物に纏わる思い出も簡単に捨て去るのか、物は物としてもう思い出しもしないのか。
考えても仕方は無い、頭を振って彼女を振り捨てた、彼女も同じ様に自分を振り捨てたのだろう。
まあいい、これも食器も全て処分だ、必要ならまた買えばいいんだから、仕事が途切れて不安が有ったが、気にしない様にした。
検索すると、思ったよりも処分業者は有った、何処が良いのか解らないが、調べると何でも処分してくれる業者が居るらしい、そこに全て任せるのが賢明だ。
自分で仕分けして、ゴミ置き場に持って行くのよりも楽だ、思い出と共に全て捨ててしまおう。
キッチンの外はここよりも簡単になる、自分の物は必要ない物を捨てて、彼女の物は捨てるか売るかだ。
見た所、アクセサリーやバック、服も持って出ているから、ここに在るのは要らないものなんだろう。
考えると気が楽になる、彼女は自分の必要な物は持って行ったのだ、だったら、これからの生活を共有したいとは思ってはいなかった事になる。
他人の物を捨てるのは躊躇われたが、彼女は捨てて行ったのだと考えると、捨てるのが正解だったのだ。
立花はあらかた片づけをすると、処分の為に業者に電話を入れた、次は家を売るのだ、そしてあの家に入るんだ。
今の段階ではそれしか考えていなかったというより、他を考える余裕はなかったのだ。