【小説】SNSの悪夢
何時も問題が起こってから対応する人生だった、それで上手く言っていた筈だった。
子供の時は走るのが遅ければ、勉強をすればいい、勉強も出来なければ、同家に徹すればいい。
学校を卒業すれば、生き方も変えると考えていたけど、仕事を始めて見ると、思ったよりも何も変わらなかった。
毎日会社に向かって、そこで与えられた仕事をする、間違いが有れば誰かがチェックしてくれて直せばいい。
それも何年か続けると、どう足掻いても重要な仕事は任せて貰えない事に気付く時期がある。
周りがちょうど結婚退社しだすと、簡単に結婚に逃げた、子供が出来たら仕事を辞めた。
収入の不安が有ればパートに出る、不満は有るけどそれなりに自由で、それなりに豊かで、それなりに満足だった。
その筈だった。
家庭に大きい問題がある人をチラ見して、私は運がいいなんて考えていた、日々のストレスはSNSで晴らし、それなりの人生に満足していた。
私が何をしたと云うのだ。
本当はあそこに居る人間は明日の自分だ、そう思えていたら良かったのか??
明けない夜は無いなんて、朝を迎えた人が言う言葉で、深夜の中に取り残された人間には耳に入らない。
今の私の前には漆黒の深夜で、対処の仕方なんて解らない、どうしよう、どうしたらいい、誰にも聞けない言葉を頭に押し込む。
SNSで発信されたからには、止めようがない、電気の無い場所に行かない限り、何処に行っても見つかる。
離婚して子供と何処かに行くべきか、それとも彼を支える為に、自分が正社員で働きながら、ここに居るのか。
選択肢は沢山ある筈なのに、自分にはどの道を選べばいいのかが、まるで分かっちゃいない。
「お母さん、如何したの?大丈夫?」娘が聞いてくる、どうも私は長時間考え込んでいたらしい。
「聞いてた????」電話が聞こえたかもしれない、不安が体中に満ちているのだろう。
「聞いてた、だって声大きかったんだもん。」そんな言い訳しなくていいのに、娘が小声で言い訳をする。
「如何しよう、お母さん解かんなくなっちゃった。」こんな時に親の弱さを見せるなんて、自分で悲しくなる。
親が弱さを見せるのは、もっと年取って、娘が大人に成ってからの筈だったのだ。
「何処かに行こうよ、ここに居たら解るだろうけど、違う所なら解らないよ、私も違う学校行くし、お母さんも違う仕事探すんだよ。」さも良い提案をしたみたいに、娘が顔を見つめて言ってきた。
こんな風に問題があって、やっと親子の意思疎通が出来るなんて、哀しい気持ちに満たされていた。